「難問を解かせる塾」で偏差値が下がるのはなぜ? あえて簡単な塾に切り替えて偏差値10上がる例も多々

「宿題が多過ぎて親が倒れそう」「難問を解かせているのに成績が上がらない」。そんな中学受験の悲劇は、塾のスタイルと教材の「不一致」が原因かもしれません。(画像出典:PIXTA)

「難問を解かせる塾」で偏差値が下がる皮肉。あえて難易度を下げて“偏差値が10上がった”驚きの実例
宿題地獄で親子が自滅する前に知っておきたい“塾選び”の分岐点(画像出典:PIXTA)
中学受験において、よかれと思って選んだ塾が、実は子どもの首を絞めているケースがあります。典型的なのが「オーバースペック」の問題です。

今回も引き続き、中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表で、現役の家庭教師として『本当にかしこい子になる!勉強メンタルの育て方』(ウェッジ)など多くの著作を持つ西村則康先生にお話を聞きました。

各塾のテキストに精通する西村先生とともに、親子で疲弊しないための戦略を深掘りします。
本当にかしこい子になる!勉強メンタルの育て方
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親子を追い詰める“オーバースペック”問題

中学受験において、背伸びをし過ぎることは必ずしもプラスには働きません。

実際、ある受験生は偏差値59の付属校を第一志望にしていました。ところが通っていた塾は「とにかく難しい問題を解かせる」方針。テキストには常に、志望校のレベルをはるかに超える難問が並んでいたといいます。

「基礎力を問う中学を受けるのに、どうしてこんな難しい問題を解かなければいけないのか」と、お母さまは頭を抱えていたそうです。

こうした「オーバースペック」がなぜ問題なのか。西村先生はこう言います。

「基礎ができていないと難しい問題は解けません。それなのに、基礎の補完をせずに授業や宿題で難問ばかりを解くことになると、それで時間を取られてしまい、本来やるべき基礎固めができなくなってしまいます」

実際、難易度の高いテキストを使う塾から、より基礎を中心としたテキストの塾に転塾した結果、偏差値が10上がったという例もしばしばあります。

これは中学受験に限った話ではありません。大学受験の合格体験記でも、「現役の頃は難問ばかり課されて基礎が抜け落ちていたが、浪人して予備校で基礎からやり直したところ、志望していた難関医学部に合格した」という話が毎年繰り返し語られています。

自分に合った難易度やスタイルのテキストで学習することがいかに大切か、よく分かります。

大手塾のテキストに見る、教育方針の差

塾選びのもう1つの盲点が、学習のスケジュールと記述対策のタイミングです。テキストによって、その“歩幅”は大きく異なります。

SAPIXや「予習シリーズ」は進度が速く、小学5年生で全てのカリキュラムを終えます。一方、日能研や「新演習」は比較的ゆっくりで、全範囲を終えるのは小学6年生の夏前となります。

早く終える塾は、6年生の夏から実践的な演習に入りますが、進度がゆるやかな塾は、夏前までじっくり基礎を網羅していきます。どちらがよいかは、子どもの理解スピード次第です。

また、国語の「記述対策」や「教材の工夫」にも大きな差があります。

「SAPIX、日能研、『予習シリーズ』の国語は、小学4年生から記述練習を意識した構成です。特にSAPIXは、ページ数を自由に変えられる週ごとの小冊子形式を生かし、最新の入試で頻出するような『超長文』を掲載。4年生から記述特化の『Bテキスト』を使うなど、難関校対策への即応性は群を抜いています」

対して「新演習」や「予習シリーズ」など、1冊のテキストとしてまとまっている場合、そこまでの長文を扱うのは難しい傾向にあります。

その一方で、「新演習」の国語は4年生から記述を本格化させないなど、子どもの負担に配慮した設計となっており、解説が丁寧なところも長所です。

また日能研の理科・社会のテキストには、ある大きな特徴があるとのこと。

「他塾のテキストは覚えるべき重要語句が太字になっていますが、日能研にはそれがありません。何が大切かを生徒自身が判断することを求めているのです。思考力や判断力を育もうとする、非常に理想の高いテキストと言えます」

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