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なぜ日本は男系継承を守ってきたのか
では、なぜここまで男系にこだわってきたのか。それは、日本が「権威」と「権力」を明確に分離してきた国だからです。
天皇は「権威」を体現する存在であり、平清盛、織田信長、徳川家康などの時の政権が「権力」を担うことで、天皇の地位は政争に巻き込まれることなく維持されてきました。
一方、他国では「権威」と「権力」が一体化しています。ですから王朝が交代するたびに、その国の国家体制や国名そのものが変わっていくのです。中国、イタリア、フランス——いずれもそうです。
日本だけが、王朝が一度も変わらず続いてきたのは、男系継承という一点を守り抜いてきたからです。これは単なる思想的なこだわりではなく、「王朝の同一性」を保つための知恵であり、この方式でしか世界最古の王朝にはなり得なかったのです。
仮に女性天皇が成立し、その方が民間人や外国人と結婚した場合、その子は歴代天皇の男系の血筋を受け継ぎません。もしもその人物が皇位を継ぐことになったら、これは、これまで一度も破られたことのない皇統の原則に明確に反することになります。
皇統の正統性を支える「血統の原理」
もしこのような変化が起きたら、時間の経過とともに国民の意識にも変化が生じるでしょう。
たとえば、2代、3代と代替わりした際に、「この人はもう皇統とは関係ないのに、なぜ税金を使って皇室を維持しなければならないのか」と疑問を抱く人たちが必ず出てきます。男系継承が途絶えることは、天皇の正統性そのものが失われることを意味します。
実際、女系天皇を成立させて、意図的に皇室を内側から壊そうとしている人たちが存在します。
たとえば東京大学名誉教授の憲法学者・故奥平康弘氏は「女系天皇を実現すれば、万世一系という皇統の理念が崩れ、内側から皇室を侵食することができる」と論文ではっきり述べています。女系天皇の容認は、じつはそのような皇室否定の思想に道を開く危険性があるのです。
それにもかかわらず、多くの日本人はこの問題の本質に気づいていません。
また「女性宮家」の創設も、同様に重大な問題をはらんでいます。
女性宮家とは、女性皇族が結婚後も皇室に残り、宮家の当主となる仕組みですが、これは事実上、女系天皇への道を開くことにつながるでしょう。したがって、女性宮家の創設も絶対に認めるべきではないと私は考えています。
いずれにしても、女系天皇なるものを「時代に合わせて柔軟に」などといった安易な考えで容認してはなりません。それは、日本人が築き上げてきた歴史と伝統を、自らの手で壊す行為にほかならないからです。
この書籍の執筆者:竹田 恒泰 プロフィール
作家、実業家、皇學館大學非常勤講師。1975年、旧皇族・竹田家に生まれる。明治天皇の玄孫にあたる。慶應義塾大学法学部法律学科卒。専門は憲法学・史学。『語られなかった皇族たちの真実』(小学館)で第15回山本七平賞受賞。2021年に第21回正論新風賞受賞。『天皇の国史』(PHP研究所)、『現代語古事記』『古事記完全講義』『竹田恒泰の特別講義 天皇と皇族』(以上Gakken)など著書多数。近年は、歴史教科書の執筆・出版、古墳型墓所の設計・販売なども行っている。



