「日本の公立小の教え」は“最強の武器”だとアメリカで痛感。「遅刻しない」「責任感」だけで高評価?

私たちが日本の小学校で教わった“当たり前”の行動は、実は海外のビジネスシーンで最強の武器になります。ドキュメンタリー映画監督・山崎エマ氏の著書から、「日本人の強さ」の根源と、世界から見た歪んだ日本のイメージを紹介します。(画像出典:PIXTA)

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「日本人って人形と……?」歪んだイメージばかりが先行する、海外から見た“日本”

ニューヨークで暮らし、さまざまな人と出会う中で、日本の見え方は少しずつ変わっていきました。

渡米してすぐの頃、たとえば「京都ってすごいんでしょ? 私の夢は京都に行くこと!」と言われても、京都の近くで育った私にはピンと来ませんでした。

けれど、海外の人たちが目を輝かせて話す様子を見ているうちに、当たり前だと思っていた日本の風景も、外から見ればこんなにも特別に映るのかと気づかされたのです。

2012年に『二郎は鮨の夢を見る』というドキュメンタリー映画が全米で大ヒットしました。ニューヨークの有名劇場で何週間も上映されましたが、これはドキュメンタリー映画としては異例のことです。

当時大学生だった私は劇場でその熱狂を目にしました。のちに、大統領(当時)のオバマが舞台となった寿司店を訪れたことも影響し、アメリカでは社会現象にまでなりました。

この映画のヒットに加え、日本のラーメン店がブームになっていたこともあり、「日本=食の国」という単一のイメージが広がっていきます。

食べ物以外に話題になることといえば、サムライや忍者、そしてアニメでした。当時、アメリカでも日本のアニメブームは勢いを増していて、「アニメをきっかけに日本に興味を持った」という人がたくさんいました。

もちろん、それぞれ日本が誇るべき文化の形だと思いますが、あまりにも特定のイメージに偏っているように思えて「日本の姿って、もっと色々あるのになあ」と思ったりしました。

さらに、日本についての耳を疑うような情報に接する機会も増えました。

「日本人って人形とセックスするんでしょ?」
「みんな耳かきカフェに行くの?」

悪意はなくても、こうした質問を投げかけられるたびに胸の奥がざらつくような感覚を覚えました。

欧米のメディアが日本のごく一部の界隈で起こっていることを切り取って紹介し、その様子が「日本のスタンダード」として全世界に流される。大多数の日本人には縁のないマニアックな〝サブカルチャー〞が、欧米では「日本のメインカルチャー」として扱われる。

そうした歪んだイメージの積み重ねを目の当たりにした私は「日本を撮るなら、もっと違う角度から撮らなければ」と考えるようになりました。

もう一つ、大きなきっかけとなったのが大学3年生の時に起こった東日本大震災でした。未曾有の大災害に襲われた日本を世界中が注目して見ていました。

「日本は危ないの?」
「フクシマはどうなってるの?」

そんな質問が日常的に飛び交う中で、「外から見た日本」をより強く意識するようになったのです。非常事態にあっても、日本人が整然と列を作り、助け合う姿を讃える報道も多くありました。

アメリカでは災害時には略奪が起きるのが当たり前なのに、日本では人々が協力し合う。〝日本の当たり前〞は、世界の当たり前ではないのだということをあらためて知ったのです。

考えれば考えるほど、自分が世界に向けて語るべきものはここにしかないのだという思いが強くなっていきました。「日本」は、私という人間がドキュメンタリー映画を作るうえで、避けて通れないテーマなのだと感じ始めたのです。
それでも息子を日本の小学校に通わせたい (新潮新書 1117)
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この書籍の執筆者:山崎エマ プロフィール
1989年(平成元)年兵庫県生まれ。イギリス人の父と日本人の母を持つ。19歳で渡米しニューヨーク大学映画制作学部卒業。日本社会の中で育まれた感性と、多文化環境で培った視点を重ね合わせ、独自の視点でドキュメンタリー制作を行う。代表作は日本の公立の小学校を1年間追った長編『小学校〜それは小さな社会〜』。100館を超える大ヒットを記録し、教育やドキュメンタリーの分野を越えて広く注目を集めた。短編作品『Instruments of a Beating Heart』は第97回米アカデミー賞の短編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされ、国際的にも高い評価を得た。
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