【和田秀樹が解説】学力上位、でも「失敗への恐れ」も最上位。日本の子どもに連鎖する“恥の文化”とは

学力は世界トップレベルなのに「失敗への恐れ」も最上位。日本の子どもたちに連鎖する“恥の文化”の正体とは? 精神科医の和田秀樹氏が自身の挫折エピソードを交え、「他人の目」を気にしすぎないためのヒントを解説します。(画像出典:PIXTA)

精神科医・和田秀樹が経験した「盛大な挫折」

現在の私の主な仕事は精神科医ですが、それ以外にも、受験指導や大学教員、作家活動など、多岐にわたる職業に携わっています。

そんな私の子どもの頃からの夢は映画監督でした。私は幸いなことに子どもの頃からの夢を叶えることができ、これまでに映画監督として5本の映画を世に送り出しています。

初めて映画監督として映画を撮影したのは、大学生のときでした。16ミリ映画でしたが、プロの俳優さんに出演を依頼し、本格的な映画撮影に臨んだのです。

ところが所詮はズブの素人で、段取りも何もあったものではなく、スケジュールに大幅な遅れが発生して、俳優さんの所属事務所から怒られて、出演を辞退されてしまったのです。

そのため映画自体が撮影中止となり、そのままフェードアウトすることになってしまいました。

「ああ、なんて失敗をしてしまったんだろう」

このときは、自分の未熟さや不甲斐なさに呆れ、落ち込みました。

人は他人の失敗なんて覚えていない

しかし、大学を卒業して医師となり、それ以外の仕事もしながら、いつの日か再び映画を撮る日が来ると信じ、機会があれば逃すまいと心に誓っていました。

そうして四半世紀余りの時を経た後、『受験のシンデレラ』という映画でメガフォンを取り、今度は完成させることができました。

世間の評価も上々で、「素人監督の撮った映画とは思えない」とお褒めの言葉もいただき、モナコ国際映画祭でグランプリ受賞という栄誉に浴することにもなりました。

あの失敗の際には「やっぱり映画監督なんて、無謀だったんだ」「もう映画を撮るチャンスなんてないだろうな」というあきらめや「笑われているだろうな」といった自己嫌悪の気持ちもありました。

しかし、失敗の後に、段取りを知らないから失敗したと指摘され、素直に映画の段取りを学んだ結果、気持ちがすっとラクになったのです。

もう一つ私が気づいたのは「人は他人の失敗なんて、見ていない。覚えていないし気にしていない」ということです。

そのことに気づかなかったら、私はいつまでも悔やんで落ち込んで、映画監督に再び挑戦しようという気持ちになれなかったかもしれません。

少なくとも私自身は、自分の周りで誰かが失敗しても、たいがいは忘れてしまいます。また、他人の失敗で自分が迷惑を被っても、いつまでも根に持つこともありません。周りを見ていても、忘れてしまう人が大半です。

映画でも、巨匠といわれる名監督が世に送り出した作品のすべてが、後世まで語り継がれるわけではありません。多くの名監督にも、散々に酷評された作品があるものです。そのような作品の記憶は、名作の記憶に上書きされて、忘れ去られてしまいます。

まして、日常生活の中の他人の失敗など、とるに足らないもの。記憶している人などいないのです。

めまぐるしく世の中が動いている中で、多くの人は、他人の失敗をいちいち気にかけていられるほどヒマではないのです。「他人の目を気にして失敗を恐れる」のは、無意味で無駄なことです。
落ち込まない 考えすぎない気持ちの整理術
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この書籍の執筆者:和田秀樹 プロフィール
1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒。
東京大学医学部卒附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学学校国際フェロー、高齢者専門の総合病院である浴風会病院を経て、現在は精神科医。 国際医療福祉大学教授、ヒデキ・ワダ・インスティテュート代表。一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。川崎幸病院精神科顧問。和田秀樹こころと体のクリニック院長。立命館大学生命科学部特任教授。
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