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EXOの復活と現在地
K-POPゆりこ(以下、ゆりこ):まずは1月にカムバックしたEXOから取り上げます。すでにこの連載では5回もEXOを取り上げていて、ファンの皆さんからも多くの反響をいただきました。単に私が長年応援しているグループだから、という理由もあるのですが、今取り上げなければ、いつ語るのだ! というタイミングが再びやってきましたよ。
矢野:EXOは今年1月19日に約2年半ぶりとなる新譜『REVERXE』をリリースしました。フルアルバムとしては8枚目ということで、キャリアの長さを実感します。加えて「REVERXE(リバース)」というタイトルも非常に印象的でした。英語の“Reverse(逆行する、覆す)”から来ているのかなと思うのですが、「原点回帰」というような意味も込められているのでしょうね。
メンバーたちも最後まで迷った“SMP”とは?
ゆりこ:全体を通して原点回帰していた部分は大いにありました。アルバムタイトルには「再び新しい世界が開かれる」という意味も込めたそうです。以前EXOの“超能力コンセプト”と“ティザー考察文化”について解説しましたが、今回、数年お蔵入りしていたはずの超能力設定もカムバック。リリース前に意味深なトレイラー映像も公開され、ファンたちが「きっと、こんな意味では?」と考察し始めた様子も、全部ひっくるめて懐かしかったです。 矢野:ティザー映像、怖いというか不気味な感じがしました。SFアニメや映画のような雰囲気もあります。そして、アルバムのメインとなるタイトル曲『Crown』。個人的な感想なのですが、「僕の知っているEXOだ!」と思いました。 ゆりこ:そのご意見はかなり核心をついていると思います。初期のヒット曲を彷彿(ほうふつ)とさせる曲ですよね。最初から最後までこれでもかという重厚感があり、最近のK-POPの中ではちょっと珍しいゴリゴリEDM&アトランタトラップ、そこに加わるサイレンの音。この重い、ドスドス来る感じが彼らの威厳や格を表現しているように思いました。若手には背負いきれない〜!矢野:イージーリスニングの対極に来る感じですよね。かといって前世代的という印象ではなく、まさにEXOっぽい。
ゆりこ:メンバーたちも「今回“SMP”で攻めるか、別の候補曲でいくか最後まで迷った」と話していました。
矢野:ん? SMPって何でしょうか?
ゆりこ:SMエンターテインメント(以下、SM)独自の楽曲スタイルを「SM Music Performance」、略して「SMP」と呼ばれているんです。例としてはEXOの『MAMA』『Wolf』、東方神起の『Rising Sun』『Keep Your Head Down』、SHINeeの『Sherlock』、NCT 127『Ay-Yo』、aespa『Next Level』あたりが分かりやすいと思います。中でも「NEO・SMP」など時代やテイスト別に細分化して呼ぶパターンもありますが、今回は省略します。
矢野:ミニマルとは対極にある、音数の多い曲ですね。ギターにシンセ、いろいろな音色とジャンルがごちゃ混ぜになっているのに、なぜかイイ感じに成立している(笑)。「昔のK-POPらしいK-POP」のイメージともリンクしているように感じます。
ゆりこ:複雑な展開と転調に、重めのビート。確かに2010年代中盤までのK-POPのイメージとも重なるかもしれませんね。時にファンたちが愛を込めて「トンチキソング」なんて呼んだりしますが、愛される名曲も多いです。ユ・ヨンジンさんという古くからSMにいた著名作曲家が関わる曲に多く見られたのですが、2023年に当時のトップ、イ・スマンさんと同時に退社しています。彼が去ってから3年、こんな見事な“SMPソング”がリリースされるなんて! という驚きがありました。
矢野:今回のEXOは、よくぞ思い切ったなとも思うわけです。今はBLACKPINKメンバーのソロ曲や、CORTISの曲を聞いても、最新の世界的トレンドを融合した曲が多いですよね。音楽市場の中心、アメリカで聞かれている音楽とK-POPの境目がどんどん薄くなっている。そんな中、クラシカルという表現が合っているのか分かりませんが、曲自体も「原点回帰」するのは勇気が要ったのではないでしょうか。
ゆりこ:先ほどの話に戻りますが『Crown』以外の候補曲もすごくカッコよかったそうで、メンバーの意見も半分に分かれたと言います。あくまで予想ですが、真逆の今っぽい曲だったんじゃないかな。そっちでカムバックしたい! と考えるメンバーがいても不思議ではありませんよね。でも、結果的には『Crown』で大成功。



