【心がけ】異変に気づけるのは「飼い主」だけ
猫のために飼い主ができることは、意外と少ない。
エサをあげること、トイレ掃除、部屋の温度調節、適切な通院、脱走防止、遊ぶこと、話すこと、なでること、あと、気づくことくらいではないか。
猫は、「寝子」が語源という説があるくらいなので、よく寝る。本当にずっと寝ているので、変化に気づきにくい。だから、トイレ掃除のときには、尿の量や色、便の硬さなども観察する。また、なでるときには、毛ヅヤ、肉付きの変化、腫れ、ケガなどがないかに気をつける。触診をするような感じ。
何か異変に気づいたらすぐに病院へ。猫の時間は濃密で、速い。億劫がらず、何もなければ「何もなくてよかった」というくらいの気持ちで。
「この先生でダメなら仕方がない」と思える病院をかかりつけにすること。その病院が休みのときのために、休診日の違う二軒目の病院も押さえておくこと。もちろん最寄りの救急病院もチェックしておくこと。
……と考えていくと、飼い主にもできることは、意外とある。
【別れ】猫の死は「前借りした幸せ」を返すとき
猫を飼うということは、その猫を看取る、ということ。つまり、必ず大好きな存在との死別と向き合うことになります。
「飼う前からそんな悲しいこと考えたくないよ……」と思うかもしれません。でも、看取るまで全部含めて「飼う」ということなので、飼う前に考えておくべきだと思うのです。
猫の死は、きつい。
どこかをもがれたような感覚がずっと続く。突然、腹の底から「悲しみ」としか言えないものがせり上がってきて、吐くように泣いてしまう。自分ではまったく制御できない。
何度経験しても右往左往してしまう自分の気持ちを、どうにかやり過ごすためにたどり着いた考え方がある。名付けて「幸福前借り理論」。
すなわち、こういうことだ。猫との暮らしで得てきたおだやかさとか、やわらかさとか、あたたかさとか、おもしろさといった幸せの数々は、全部返済の義務がある「前借り」なのだ。そして、前借りした幸せを返済する唯一の方法が、「その猫を看取ること」なのだ。
僕がお守りのように、いつも心に携えているこの理論を、これから猫を飼うみなさんにもおすそわけしたいと思います。
仁尾智 プロフィール
1968年生まれ。歌人。1999年に五行歌を作り始める。2004年「枡野浩一のかんたん短歌blog」と出会い、短歌を作り始める。『猫びより』(辰巳出版)で「猫のいる家に帰りたい」、姉妹誌『ネコまる』(同)で「猫の短歌」を連載中。著書に『猫のいる家に帰りたい』、『これから猫を飼う人に伝えたい11のこと』(ともに辰巳出版)など。
公式サイトhttp://kotobako.com
小泉さよ プロフィール
東京都生まれ。おもに猫を描くフリーイラストレーター。東京芸術大学卒業、同大学院修了。著書に『猫ぱんち―二匹の猫との暮らし―』『和の暮らし』『もっと猫と仲良くなろう!』『さよなら、ちょうじろう。』『うちの猫を描こう!』など。最新刊は『ねこの描き方れんしゅう帖』(日東書院本社)。
公式サイトhttps://www.sayokoizumi.com



