数多くの親子を見てきた中で、3人の娘を桜蔭をはじめとする難関校合格へ導いた井上晴美さんが気づいたのは、「偏差値の違いは学力だけでは説明できない」という事実でした。
偏差値50未満、50〜60、60超の子どもたちには、それぞれ学力以外の「ある違い」があるというのです。
その違いを生んでいるのは、勉強時間の長さではなく、親の関わり方と日々の習慣でした。井上さんの著書『中学受験で子どもを壊さない!合格へ導く「5つの約束」』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)から、精神面の成長と成績の関係、そして親が今日からできる関わり方のヒントをご紹介します。
精神面の成長があれば、成績は自然と伸びていく
たくさんの親子や塾の先生方からお話を伺うなかで、気がついたことがあります。それは、子どもの偏差値と精神面の成熟度は、おおよそ比例しているということ。
もちろん偏差値は、子どもの学力を測るうえでの絶対的な指標ではありません。塾などによっても基準が違うため、ある塾では偏差値50の子どもが、別の塾では70になることもあります。
そうした前提を踏まえたうえで、ここではあくまでも目安として偏差値と精神面の関係を見ていきましょう。
まず、偏差値50〜60あたりの子どもたち。この層の子どもは、与えられた宿題をきちんとこなすことができます。先生や親をはじめとする大人の言葉を、素直に聞き入れて行動する力があるのです。
たとえ先生がチェックをしなくても、親がほめたり叱ったりしなくても、やると決めたことを最後までやり遂げる意識があります。こうした子どもはそのおかげで、偏差値50〜60をキープする傾向があります。
ただし、その勉強は「自分の意志でやりたいからやっている」とは限りません。「やりたくはないけれど、言われたから仕方なくやっている」という受け身の姿勢であることも多いようです。
次に、偏差値50未満の子どもたちを見てみましょう。
この層の子どもは、まだまだ幼さが目立ちます。宿題のように「やるべきこと」があっても、毎日欠かさずに取り組むのは難しいようです。宿題の中でわからないところがあると、途中で投げ出してしまうこともあります。
感情のままに行動しやすく、「大人にばれないように手を抜く」という一面を見せることも。やるべきことよりも、自分の気分や快適さを優先する傾向があるのです。
偏差値50・60の壁をつくる「決定的な差」
それでは、偏差値60を超える子どもはどうでしょうか?この層の子どもは、宿題をきちんとやるだけでなく、自分なりのプラスアルファの努力をすることができます。
「先生に言われたから」ではなく、「自分に必要だから」と判断して行動できる。勉強の目的を理解し、「何のためにやっているのか」を考えながら取り組むことができるのです。
だからこそ、わからない問題があれば、誰かに言われなくても自分で調べて解決しようとします。そのおかげで学力はどんどん伸びていきます。
なかでも上位層の子どもは、「どうすれば楽しく、効率よく勉強できるか」を考えることができます。精神面が成熟しているからこそ、自分のやる気を上手にコントロールすることができるわけです。
では、どうすれば子どもの精神面を成長させることができるのでしょうか?
最も効果的なのは、親がナビゲーターになること。親が先回りして何でも決めるのではなく、あくまでもナビゲーターとして考える方向を示したり、ヒントを出したりしながら導いていく。子ども自身の思考力や判断力を育てる関わり方をすることで、心の成長につなげていくのです。
子どもにはもともと「学ぶ力」があります。ただし、その力の強さだけが偏差値に比例しているわけではありません。偏差値は、「学ぶ力×精神面の成熟度」というかけ算の結果としてあらわれてきます。
これはつまり、親の関わり方によって精神面が育てば、その結果として偏差値も上げていけるということなのです。
ポイント
・偏差値の高さは、精神面の成熟度と深く関わっている・親は子どものナビゲーターとなり、考えるきっかけを渡していけば心の成長につながる



