【前回の記事「2025年デビュー組に見る『K-POPの未来』」(#53)はこちら】
いつまでもルーキーではいられない!?
K-POPゆりこ(以下、ゆりこ):2025年のK-POPシーンを振り返って、まず感じるのは「新人」「デビュー」という言葉の価値が明らかに変わったということです。世に出るやいなや、いきなりベテラン勢やトップスターと同じ土俵に乗せられ、新人だからと注目される“ご祝儀期間”はどんどん短くなっているように思います。
矢野:以前から「日本のアイドルは成長を見守る楽しみがある」一方で、K-POPは「完成度の高さで魅了する」といった言葉を見聞きしますが、さらにハイレベルなものを求められているということですよね。
ゆりこ:はい。もちろんK-POPの世界においても、若手ならではのフレッシュさは瞬発的な強みにもなりますし、ファンも一緒になって成長物語を楽しんでいる部分は間違いなくあります。韓国発のオーディション番組が人気なのも、その証拠でしょう。一方、オーディション番組出身であれ事務所の秘蔵っ子であれ、市場から求められる完成度は年々と上がっている。新人が“新人”でいさせてもらえなくなってきたな、と実感させられる年でした。
矢野:「期待の新人」「デビュー曲」という切り札がもはや切り札ではなくなっているということですね。2025年にデビューしたALLDAY PROJECTやCORTISは、パフォーマンスも佇まいも実年齢より大人びていると言いますか、最初から完成されている印象を抱きました。もちろん彼らは今後も変化して、成長していくはずなので「末恐ろしい!」の一言です。 ゆりこ:IVE、NewJeansのあたりからその傾向は感じましたが、デビューしてすぐにシーンの主役になれるし、なるつもりでデビューしないといけない。新入社員に“即戦力”を求めるような過酷さがありますね。K-POPがローカルなジャンルを超えて、グローバル・ポップの一角を担う存在になったがゆえ、音楽、パフォーマンス、佇まい、その全てを世界基準で評価されてしまう状況でもあります。サブスクを通じて音楽との出会いを楽しんでいるリスナーにとって、“新人か否か”はあまり重要なポイントではないでしょう。



