もう“コンセプト”や“伸びしろ”だけでは売れない?2025年以降の「K-POP新人グループ事情」を考える

2025年もたくさんのK-POPグループがデビューしました。ルーキーというよりいきなりスター!のような完成度の高いアーティストたちばかり。そんな新人グループ事情をもとに、K-POPシーンに起きている変化とその背景を考えます。※写真:アフロ

M世代の韓国エンタメウオッチャー・K-POPゆりこと、K-POPファンのZ世代編集者が韓国のアイドル事情や気になったニュースについてゆるっと本音で語る【K-POPゆりこの沼る韓国エンタメトーク】。韓国エンタメ初心者からベテランまで、これを読めば韓国エンタメに“沼る”こと間違いなし!
K-POPゆりことZ世代編集者がゆるっとトーク
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#54では、前回に引き続き「2025年の新人K-POPグループ」をテーマに取り上げます。世に出た瞬間から高い完成度を求められ、世界基準で評価されるK-POP界の新人アーティストたち。コンセプトの飽和や先輩グループの長寿化といった環境の変化を背景に、もはや“新鮮さ”や“伸びしろ”だけでは注目を集めにくくなっています。今回は、現在の新人グループ事情を手がかりに、K-POPシーンに起きている変化とその背景を考えていきます。

【前回の記事「2025年デビュー組に見る『K-POPの未来』」(#53)はこちら

いつまでもルーキーではいられない!?

2025年8月、BTSやTOMORROW X TOGETHERが所属する事務所・BIGHIT MUSICからデビューしたCORTIS ※写真:アフロ
2025年8月、BTSやTOMORROW X TOGETHERが所属する事務所・BIGHIT MUSICからデビューしたCORTIS ※写真:アフロ
編集担当・矢野(以下、矢野)#53では、僕たちが2025年にデビューした新人の中から、特に気になったグループを取り上げました。今回はその流れで、最近のデビュー組に共通して感じる完成度の高さや、これまでとの違い、そしてK-POPシーンの変化について、もう少し掘り下げて話していきたいと思います。いわば前回の延長戦ですね。

K-POPゆりこ(以下、ゆりこ):2025年のK-POPシーンを振り返って、まず感じるのは「新人」「デビュー」という言葉の価値が明らかに変わったということです。世に出るやいなや、いきなりベテラン勢やトップスターと同じ土俵に乗せられ、新人だからと注目される“ご祝儀期間”はどんどん短くなっているように思います。

矢野:以前から「日本のアイドルは成長を見守る楽しみがある」一方で、K-POPは「完成度の高さで魅了する」といった言葉を見聞きしますが、さらにハイレベルなものを求められているということですよね。

ゆりこ:はい。もちろんK-POPの世界においても、若手ならではのフレッシュさは瞬発的な強みにもなりますし、ファンも一緒になって成長物語を楽しんでいる部分は間違いなくあります。韓国発のオーディション番組が人気なのも、その証拠でしょう。一方、オーディション番組出身であれ事務所の秘蔵っ子であれ、市場から求められる完成度は年々と上がっている。新人が“新人”でいさせてもらえなくなってきたな、と実感させられる年でした。

矢野:「期待の新人」「デビュー曲」という切り札がもはや切り札ではなくなっているということですね。2025年にデビューしたALLDAY PROJECTやCORTISは、パフォーマンスも佇まいも実年齢より大人びていると言いますか、最初から完成されている印象を抱きました。もちろん彼らは今後も変化して、成長していくはずなので「末恐ろしい!」の一言です。
ゆりこ:IVE、NewJeansのあたりからその傾向は感じましたが、デビューしてすぐにシーンの主役になれるし、なるつもりでデビューしないといけない。新入社員に“即戦力”を求めるような過酷さがありますね。K-POPがローカルなジャンルを超えて、グローバル・ポップの一角を担う存在になったがゆえ、音楽、パフォーマンス、佇まい、その全てを世界基準で評価されてしまう状況でもあります。サブスクを通じて音楽との出会いを楽しんでいるリスナーにとって、“新人か否か”はあまり重要なポイントではないでしょう。
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「コンセプト勝負」の限界とK-POPグループの長寿化
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