3:「禰豆子のような走り方」の実はショッキングな元ネタ、そして連想したもう1つの作品
ところで、ポスターアートにもなっている、子どもたちが逆のV字型に手を広げて走るポーズは、日本の漫画『Dr.スランプ』のアラレちゃんや、『鬼滅の刃』の竈門禰豆子を連想します。しかし、実際にクレッガー監督がインスピレーションを得たのは、1972年にベトナムで撮影された「ナパームの少女」という有名な写真だったそうです(IMDbのトリビアより)。
同写真での爆撃を受けた村から逃げる9歳の少女の姿はひどくショッキングであり、戦争犠牲者の痛ましさを克明に捉えています。それは終盤のネタバレ厳禁のおぞましい展開にも、部分的にはリンクしているともいえるでしょう。
さらに、「WEAPONS」という謎めいたタイトルは、「武器」という概念の恐ろしさを改めて示しているとも言えますし、物語全体を見渡せば「大人が子どもに何をしてあげられるのか」という、逆説的な大きな思考をも促されるのです。
最後にもう1つ、筆者が強く連想した作品も挙げておきましょう。それは漫画『ジョジョの奇妙な冒険 第4部 ダイヤモンドは砕けない』です。そちらも「田舎町で不穏な事件が起きる」という物語の土台のほか、一触即発の攻防戦が起こることや、さらには「悪意に立ち向かう人間の精神の強さ」を称えるような作劇も一致しているのですから。
とにかく、本作は面白いです。それでいて、もしも現実で不条理な出来事に遭遇したとしても、希望を失わずにいられるかもしれない……ホラー映画では『サユリ』と並んで、そんな希望さえも得られる作品なのです。ぜひとも、映画館で食い入るように見てほしいです。
※“禰豆子の「禰」は「ネ」+「爾」が正式表記



