ヒナタカの雑食系映画論 第201回

なぜ満席続出? 傑作にして怪作映画『WEAPONS/ウェポンズ』ネタバレなしで知りたい3つのこと

世界中で大ヒットを飛ばした映画『WEAPONS/ウェポンズ』が日本でも満席続出となりました。なぜ本作が「ネタバレ厳禁」であるのか?作品の魅力と共にたっぷり解説しましょう。(画像出典:(C) 2025 Warner Bros. Entertainment. All Rights Reserved)

3:「禰豆子のような走り方」の実はショッキングな元ネタ、そして連想したもう1つの作品

ところで、ポスターアートにもなっている、子どもたちが逆のV字型に手を広げて走るポーズは、日本の漫画『Dr.スランプ』のアラレちゃんや、『鬼滅の刃』の竈門禰豆子を連想します。

しかし、実際にクレッガー監督がインスピレーションを得たのは、1972年にベトナムで撮影された「ナパームの少女」という有名な写真だったそうです(IMDbのトリビアより)。

同写真での爆撃を受けた村から逃げる9歳の少女の姿はひどくショッキングであり、戦争犠牲者の痛ましさを克明に捉えています。それは終盤のネタバレ厳禁のおぞましい展開にも、部分的にはリンクしているともいえるでしょう。

さらに、「WEAPONS」という謎めいたタイトルは、「武器」という概念の恐ろしさを改めて示しているとも言えますし、物語全体を見渡せば「大人が子どもに何をしてあげられるのか」という、逆説的な大きな思考をも促されるのです。
ウェポンズ
(C) 2025 Warner Bros. Entertainment. All Rights Reserved
また、クレッガー監督が本作の脚本を書き始めたのは、友人の突然の死がきっかけでした。同世代の俳優の中のトレヴァー・ムーアが、2021年に酒に酔って自宅のバルコニーから転落して死亡しました。クレッガー監督自身もまたアルコール依存症だったことも、ジャスティンのリアルな依存症描写に反映されていると思われます(映画秘宝のnoteより)。

最後にもう1つ、筆者が強く連想した作品も挙げておきましょう。それは漫画『ジョジョの奇妙な冒険 第4部 ダイヤモンドは砕けない』です。そちらも「田舎町で不穏な事件が起きる」という物語の土台のほか、一触即発の攻防戦が起こることや、さらには「悪意に立ち向かう人間の精神の強さ」を称えるような作劇も一致しているのですから。
ウェポンズ
(C) 2025 Warner Bros. Entertainment. All Rights Reserved
さらに、終盤にはさらに「ジョジョっぽい」展開があるのですが、それもまたネタバレ厳禁なので秘密にしておきましょう。

とにかく、本作は面白いです。それでいて、もしも現実で不条理な出来事に遭遇したとしても、希望を失わずにいられるかもしれない……ホラー映画では『サユリ』と並んで、そんな希望さえも得られる作品なのです。ぜひとも、映画館で食い入るように見てほしいです。

※“禰豆子の「禰」は「ネ」+「爾」が正式表記
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