5:「生ききる」というメッセージ
今回の映画化にあたり、原作者・柚月裕子からのリクエストは一切なく、脚本も兼任する熊澤監督に一任されたそうです。その上で、熊澤監督が映画として用意したラストでは、「上条桂介に『生ききる』という選択をしてほしいという願いを込めた」のだそうです。
そのクライマックスはもちろん、主人公・上条桂介が迎えたラストシーンもまた、「なにが幸せで、なにが不幸なのか、それは本人しかわからない」と思える選択であり、「生ききる」という作品のメッセージそのものに思えました。
桂介はどんな決断をするのか、東明は何を望んでいるのか。あのクライマックスから感じたのは、なにが幸せで、なにが不幸なのか、傍から見て恵まれていないと思っても、その人自身はすごく充実しているかもしれないということ。
(中略)
自分が選べない道を、選びたくない道を選ばざるを得ないという苦しみがあるなかで、自分で選んだと思えることはとても満たされている。私たちも、日々小さなことから人生を左右するような大きなことまで決断する瞬間がたくさんあります。そういう時に自分が望む形で決断しようと勇気をもらえる、そんなメッセージが含まれている映画なのだと、お二人の対局を見ながら感じました。
これまで筆者は「もういいから! 幸せにさせてやってくれよ!」と叫んでいましたが、その壮絶な人生を生きても、実は桂介は「納得」「満足」もしているのではないかとも想像できる……そんな物語でした。ラストまで目を背けず、見届けてほしいです。
この記事の執筆者:
ヒナタカ
映画 ガイド
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「マグミクス」「NiEW(ニュー)」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
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