結論から申し上げれば本作はべらぼうに面白い! カンヌ国際映画祭のミッドナイト・スクリーニング部門のワールドプレミアで8分のスタンディング・オベーションで迎えられたことも納得の、世界に通用するエンタメになっていました。 ここではネタバレなしで事前に知ってほしいこと、具体的な魅力を記していきましょう。
1:原作ゲームを知らなくてもOK! シンプルな「間違い探し」を楽しもう
まず、本作は予備知識ゼロでまったく問題なく楽しめます。原作ゲームは「“異変”を見つけたら引き返し、見つからなければ進んで、ゴールである“8番出口”を目指す」という単純明快なルールがあり、今回の映画ではもちろんその設定を踏襲した、シンプルな「間違い探し」の面白さがあるのですから。それでいて、原作ゲームにはない新たな異変があるほか、原作ゲームを遊んでいてこそ(あるいは実況プレイ動画を見ていてこそ)分かるサプライズも仕込まれています。原作を知らない人、知っている人でそれぞれ別の楽しさがある、とても間口の広い作品なのです。
2:怖い? 怖くない? 子どもが見ても大丈夫?
本作はちゃんと「ホラー映画」としてジャンル分けできる内容であり、ともすれば「怖いか」「怖くないか」が気になっている人も多いでしょう。ちなみに、映画はG(全年齢)指定ですが、原作ゲームは恐怖表現のためB(12歳以上対象だが誰でも購入とプレイは可能)指定となっています。ホラー映画を見慣れている筆者としては、今回の映画の怖さはマイルドなほうで、ホラー初心者にもおすすめできるし、お子さんも小学校高学年くらいからであれば問題ないのでは……と言いたいところ。一方で、人によって何を怖く感じるかはバラバラで、絶対的な指標は存在しないため、究極的には「怖さについては誰の意見も信用しないほうがいい」「見てみるしかない」でしょう。
それでも言えるのは、グロテスクで残酷なシーンも、「ワッ」と大きな音で驚かせるような、いわゆる「ジャンプスケア」も、かなり控えめな作りではあるので、過度に警戒しなくてもいいということ。
ただし「目を覆いたくなるほどにショッキングな光景と、急でびっくりするジャンプスケアといえなくもない場面が、それぞれ1カ所ずつあるといえばある」というあんばいではあるので、それ相応の覚悟を持って見るのがおすすめです。
断言できるのは、本作に限らず「ホラー映画は映画館で見たほうがいい」ということ。本作は特に後述する「没入観」や「ずっと見ることしかできない」ことを生かした特徴があるので、ほかにジャマが入らない環境、特に「暗がり」が効果的に働く劇場でこそ、真の面白さと恐怖をたっぷりと味わえるはず。それは、直近の(こちらはPG12指定でもおかしくない残酷さもある)映画『近畿地方のある場所について』も同様でした。
【9月2日追記】本編に「水害・津波(それに伴うサイレンの音)」の描写があり、その注意喚起が必要ではないか、という指摘がSNSで複数寄せられ、公式から「津波など自然災害を想起させるシーンがございます」とアナウンスがありました。ご了承の上でご覧になることをおすすめします。



