ヒナタカの雑食系映画論 第180回

『星つなぎのエリオ』の『鬼滅の刃』と好対照の5つの魅力。「戦わない」物語の意義とは

ディズニー&ピクサー最新作『星つなぎのエリオ』の5つの魅力を紹介しましょう。『鬼滅の刃』と好対照だからこそ、どちらも見てほしい理由があるのです。(C)2025 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

5:オタクの「好きなことは好きでいい」という姿勢は全肯定

一方で、『エリオ』において完全に肯定されていることがあります。それは「オタク」であること!

エリオが宇宙が大好きで、かつ無線機で交信をしようとしていたことも劇中では確かな意味がありますし、だからこそエリオに興味を抱いた地球の少年・ブライスや、オルガの部下で無線オタクの大人・メルマックというキャラクターにも、重要な役割が与えられているのです。

そして、前述したようにエリオとグロードンが戦わない選択をしたため、バトルシーンはないに等しいのですが、一方で「オタクの知識」を生かした、楽しくもスリリングなアクションシーンが用意されているのはうれしいところ。それを持って、本作は「好きなことは好きでいい」という、「オタク讃歌」とも言える内容になっているのです。
エリオ
(C)2025 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
また、本作は既存の映画のオマージュや、その影響も見受けられます。子どもが宇宙人と交流する様は『E.T.』的ですし、とあるストレートな『ターミネーター2』のパロディーもありますし、宇宙船から放たれた光がエリオを招く場面は『未知との遭遇』らしく、オタクを肯定する様は『ギャラクシー・クエスト』にもあった面白さです。作り手が明らかに映画オタクであることが、劇中でオタクを肯定することにも、確実につながっているのでしょう。

おまけ:BUMP OF CHICKENのエンドソングがぴったりの理由

日本版エンドソングであるBUMP OF CHICKENの『リボン』が、映画にピッタリだと称賛をされています。
今回の映画のために描き下ろされたわけではなく、2017年にリリースされた楽曲にかかわらず、「『エリオ』のためにあった」とさえ思えるほどなのです。この曲の起用理由を、公式Webサイトから引用しておきましょう。

温かい音色で奏でられるメロディーの中で「嵐の中をここまで来たんだ」と歌い出す歌詞は、周囲の人間と馴染めず、他人に対して壁を作ってしまうひとりぼっちのエリオの寂しさにも寄り添うように歌われ、「側にいる事を選んで 今側にいるから 迷子じゃないんだ」と語りかけるような藤原さんの歌声は、本作でエリオとグロードンが絆を深める中で、そのままの自分を愛する勇気をもらったように、この広い世界で寂しさを抱えるすべての人の心をつつみこむやさしさに溢れています。

まさにその通りで、「孤独」について真摯に向き合った物語に、ここまでマッチした曲を選んでくれたことをうれしく思います。映画の余韻に浸りつつ、ぜひ『リボン』にも耳を傾けてほしいです。

※禰豆子の「禰」は「ネ+爾」が正式表記

この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「マグミクス」「NiEW(ニュー)」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
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