慶應・上智の推薦枠が余って二次募集!? 進学校と推薦校で起きている意外な逆転現象

今、大学の推薦入試制度に大きな変化が起きています。学校の種類や地域によって推薦入試の難易度に“格差”が生まれているのです。従来の常識を覆す推薦入試の現状を紹介します。(画像出典:PIXTA)

進学校では難関大学の指定校推薦の枠が余る

一方、進学校の指定校推薦事情はどうでしょうか。

進学校には難関大学の指定校推薦がたくさんきますが、それらは余ります。

ある偏差値60の進学校では、慶應義塾大学の文系学部の指定校の枠が余って二次募集をするという事態が起きました。評定平均値が高い生徒たちは、国立大学や医学部を狙うため、慶應義塾大学の文系学部の指定校推薦を希望しないからです。

また、今どきの高校生は「どの大学に行くかよりは勉強したいことを優先する」傾向があります。そのため、先生が評定平均値が高い私立専願の生徒たちを説得しても「希望の学部じゃないから」と拒否することが続いたそうです。

しかし、そういった進学校の生徒が推薦入試に興味がないわけではありません。推薦塾に取材にいくとそうそうたる難関高校の制服を着た生徒たちの姿を見かけます。

ある難関校の生徒は上智大学への進学を希望していますが、評定平均値が4.0。これでは指定校推薦はとれません。しかし、上智大学の公募制の出願条件は評定平均値が4.0以上、英検2級以上。こちらなら出願ができるから塾で対策をしているのです。

上智大学はカトリック校の生徒を対象とした総合型選抜を行っていますが、こちらも難関のカトリック校で評定平均値が足りなくて、上智大学の指定校推薦がとれない生徒たちが受験しています。

つまり、進学校で指定校推薦をとろうとすると、校内での競争は激しくないのですが、評定平均値をとるのが大変ということになります。

「物理を履修していない」のがネックになる

進学校と推薦校の事情の違いを説明しましたが、実際に指定校推薦をとるにはどうしたらいいのでしょうか。

指定校推薦は、大学が高校に通知書を送り、そこに条件が書かれています。

評定平均値がいくつ以上、英検資格、欠席日数、指定した科目の履修。こういったものが求められます。「著しい活動実績」と書かれていることも多いですが、これは気にしなくてもいいです。

指定校推薦で求められるのは模範的な優等生です。大学へ入学後、問題を起こさず、ちゃんと勉強をして優秀な成績を修め、就職をしていってくれる学生です。ですから、活動実績は気にしなくても大丈夫です。

条件の中で割とネックになるのが指定した「科目の履修」です。理系の学部学科では「物理を履修していること」と指定することが多いのですが、理系の生徒でも化学と生物を履修していても物理をとっていないケースもあります。

今、理系学部は多くの指定校推薦の枠を高校へ出していますが、なかなか埋まっていきません。

なぜなら、そういった理系の指定校推薦は物理の履修が必須なケースが多く、しかし、理系でも物理を履修してない生徒も多いからです。

ある女子校では慶應義塾大学や上智大学の理工学部の指定校推薦が毎年、余ってしまいます。理由は女子校で物理を履修しているのは国立や医学部希望者が多いからです。

ある女子学生はこう話しました。

「高校時代、物理の先生の指導力が微妙で評判が良くなかったんです。それで履修しなかったんですよ。そうしたら、難関私立大学の理工学部の指定校推薦がとれなくて。それで一般選抜で受験をしました」

それと欠席の日数は気にしないといけません。指定校推薦の出願条件で、欠席15日以内というケースもあります。年に5日以内しか休めないわけで、うっかり風邪も引けませんね。
大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法
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杉浦 由美子 プロフィール
受験ジャーナリスト ノンフィクションライター2005年に朝日新聞社でライター活動を始める。月刊誌や週刊誌で記事を書き、『女子校力』(PHP新書)のヒットをきっかけに教育関係を中心に取材と執筆をするようになる。現在は数多くのWEBニュースサイトで連載をし、週刊誌や月刊誌にも寄稿している。最新刊に『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』(青春出版社)。
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