宿泊学習の夜は眠れない? 現役教師が語る「見回り」と「告白ラッシュ」の舞台裏

学校生活の大きな行事の1つといえば、修学旅行や林間学校などの宿泊学習。実は、子どもたちの就寝後も先生たちの仕事は続くということを知っていましたか? 今まで知らなかった「生徒が寝た後の先生の仕事」を現役の小学校教師にお聞きしました。

宿泊学習で生徒が寝た後、先生たちは何してる? 現役教師の回答は
宿泊学習で生徒が寝た後、先生たちは何してる? 現役教師の回答は(画像出典:PIXTA)
学生生活での思い出の1つといえば、宿泊学習。特に旅館やホテルでの時間は、友達と過ごす非日常的な体験にワクワクした人も多いのではないでしょうか。中には、つい夜ふかしをして先生に怒られた経験があるという人もいるのでは?

今回は、そんな宿泊学習時の先生たちの夜の過ごし方について、現役の小学校教師である松本隼司さんにお聞きしました。

(今回の質問)
宿泊学習の日の夜、先生たちは何をしているのですか?

 

(回答)
見回りや安全管理のほか、次の日に向けた申し送りなど、さまざまな業務を分担しています。

どういうことなのか、以下で詳しく解説します。

見回りや安全確認のほか、おねしょの可能性がある子どもへの配慮も

基本は子どもたちの安全管理のための見回りなどを行っています。

具体的には、入浴時の見守り、食事のアレルギー食材の有無の確認、そして皆さんが一番想像するであろう、就寝時の見回りです。

夜の見回りは、子どもたちが寝静まるまで何度も行います。いつもと違う環境でなかなか寝付けない子がいると大変です。

また、修学旅行などは宿泊施設での食事以外に外食の機会もあるので、ふだんの給食以上に子どものアレルギー食品には気を付けています。

そのほかは、薬の服用が必要な子どもの把握、夜尿(おねしょ)の可能性がある子どもへの配慮などを保護者に依頼されたこともありました。おねしょをしてしまうかもしれない子どもは、夜中に一度本人を起こし、トイレに連れて行っています。

子どもたちが寝静まった後は、職員同士で反省会を行っています。健康面の申し送りや、翌日の動きの確認などです。宿泊学習では必ずと言っていいほど体調不良の子どもが出ますから、教師全員での状況把握は欠かせません。

修学旅行特有の“告白ラッシュ”が、実は先生から見て要注意のワケ

修学旅行などでは子どもたちのテンションが最高潮になった結果、「告白ラッシュ」が起こることも(笑)。

主に夜に行われることが多いのですが、告白が残念な結果に終わった場合、次の日のモチベーションに影響することもあります。

そのため、教師の仕事ではないのですが、子どもたちのそうした空気を把握した場合はやんわりと「明日以降にしたら?」と声をかけることもあります。

思いっきり楽しんでもらうのはよいのですが、修学旅行もあくまで教育課程の一環です。

振られて落ち込んでしまった結果、最後まで準備した内容を楽しめなくなっては本末転倒ですから、子どもたちが学習に集中できる環境を整えるのも、教師の仕事だと思っています。

宿泊学習だからこそ得られる、子どもたちとの強い絆

以上のように、宿泊学習はイレギュラーが起こることも多く、教師にとってはなかなか大変な仕事です。しかし、全ての日程が終わり普段の学校生活に戻ると、子どもと教師の間に新たな絆が生まれることを毎回感じます。

教師も含めた全員で宿泊学習をやり遂げたことが、子どもたちにとって大きな自信、そして成長につながっているのだと思います。
松下隼司さん
大阪府公立小学校教諭。令和4年度文部科学大臣優秀教職員表彰受賞。令和6年版教科書編集委員。第4回全日本ダンス教育指導者指導技術コンクール文部科学大臣賞、第69回(2020年度)読売教育賞 健康・体力づくり部門優秀賞などの受賞歴を持つ。新刊「先生を続けるための『演じる』仕事術」(かもがわ出版、2025年7月23日発売)など著書多数。voicyで『しくじり先生の「今日の失敗」』を発信中。
先生を続けるための『演じる』仕事術
先生を続けるための『演じる』仕事術
 
この記事の執筆者:大塚 ようこ
フリーランス編集・ライター。子育てや教育、夫婦問題、ジェンダーなどを中心に幅広いテーマで取材・執筆を行っている。
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