今回は、先生にとって「働きやすい環境」「働きにくい環境」を、現役教師である教員ブラックさんにお聞きしました。

教師にとって「働きやすい環境」「働きにくい環境」
——教員ブラックさんがこれまで赴任されてきた中で「この学校は働きやすかったな」と思う学校は、どのような学校でしたか?「学校のさまざまな業務がシステマチックになっていた学校は働きやすかったです。
学校の中の仕組みはどうしても自治体ごとに大きな差があるのですが、さまざまな業務に関して細かくやり方が決まっている学校は、転勤直後でも業務内容が明確だったのですんなり仕事に取り組むことができました。
具体的には、例えば運動会の種目が毎年決まっていて『今年の種目はどうしようか』という打ち合わせなく準備を進められる、などです。こうした学校は、教師だけでなく子どもたちも競技のやり方が分かっているので、先輩が後輩に教えに行くという姿も見られました。そうすると、教師の指導の時間も短縮され、より円滑に運動会が運営できましたね」
——システマチックなことが教師の負担軽減にはもちろん、子どもたちの自発的な活動にもつながっていたのですね。
「そうですね。一方で、長年決まりきった教育課程を続けていた結果『この運動会の種目、よく考えたら軍隊みたいだよね』と指摘されるものもあり、定期的な見直しは必要だとは感じることもありました」
——働きにくい印象が残る学校はどのような環境でしたか。
「50代以上のベテラン先生がとにかく動いてくれない学校は大変でした。『あ、この人たちこんなに何もしないんだ』と思った記憶があります(笑)。
もちろん、50代以上の先生が全員そうというわけではありません。その後に赴任した学校では、ベテランの先生方がとても積極的に動いてくれる方ばかりだったので、本当に人によって違うのだなと思います。
でも、やはり全員で協力できない環境というのは、働きにくさを感じる要因の1つだと思います」
教師の働く環境を左右する「管理職の質」
——教員ブラックさんが考える、教師の働く環境を左右するものはなんだと思いますか。「たくさんありますが、その1つに管理職の質があると思います。多くの小学校では、校長、教頭、教務主任が中心となって学校を運営しているのですが、この三役の連携や意思疎通がとれていないと、その下の先生が苦労することになってしまいます。
僕が勤務した学校で、何事にも『こうあるべき』という強いこだわりを持った女性が教頭に赴任したことがありました。一方で、校長はあまり波風を立てたがらず、教頭に強く言えない人。
そのため、教頭が自分の偏った考えを部下に押し付けようとして反発が起き、部下が校長に相談するも校長は何もアクションを起こしてくれない、ということが頻繁にありました。結果、職員室の雰囲気は最悪。
もちろんこのような状況で学校運営がうまくいくはずもなく、その年の年度末の保護者アンケートでは『管理職が頼りなかった』という意見が数件来ていました。教師のよくない雰囲気は、保護者にも分かってしまうんですよね。
——一方で、働きやすいなと感じる管理職は、どのような方でしたか。
「職員室の中でもアンテナを高く張っているタイプの人です。トラブルが起こりそうなところにすぐに気付いて声をかけたり、業務で困っている人がいたらさっと助言をしてあげたり、そういうことができる管理職がいる職場は働きやすいです。
よく考えると、これはクラス担任にも必要な資質なんですよね。子どもに対して高くアンテナを張っている教師であれば、子どもたちの変化やクラスの空気に気付いて指導をすることができる。当たり前かもしれませんが、よいクラス担任がよい管理職になれるということなんです。
一般企業でもそうだと思いますが、やはり『他者に寄り添える人』が上司にいることが、教師がストレスを溜めずに働ける大きな要素だと思いますね」
職員室での人間関係に左右されないために必要なこととは
——現在職員室での人間関係に悩む先生に、教員ブラックさんならどのようなアドバイスをしますか?「参考になるか分かりませんが、基本的には目の前の仕事に一生懸命取り組んで、完璧に近いところまで持っていけるようにし、『仕事に対して誰にも文句をいわせない』という状況をつくるのが一番確実な気がします。
また、ICT関連業務や特定の教科などで得意分野を持つことも、自分の立ち位置を確立することに有利に働くのではないでしょうか。
僕の場合、長年の教員生活の中で主に部活と校内のICT環境の整備を任されることが多かったです。特にICTに関しては、年配の先生はタブレット端末などの使い方に疎い方も多く、今も周りの先生から頼りにされることが多いです。
そういう強みを持つと学校の中でも確固とした立ち位置ができるので、これまで話したようなミドル世代や管理職などから攻撃されにくくなるんですよね。
加えて、僕は飲み会などの席には極力参加しません。気が進まないのに仕方なく参加するよりも、『あの人はこういう会には来ない人』と思われる方が楽なので。ちょっとしたキャラクターづくりが働きやすい環境づくりにつながるかもしれません。最初は少し言いにくいとは思いますが、一度言ってしまえば周りも分かってくれると思いますよ」
教師の働きにくさや人間関係のこじれは多岐に渡り、それら全てを個人で解決することは難しいのが現実です。しかし、その中で自分がどう働くか、どう振る舞うかが「働きやすさ」を左右するのかもしれません。
まさに今、学校での働き方に悩んでいる先生にとって、よりよい働き方のヒントとなったのではないでしょうか。
教員ブラックさん プロフィール
教師として学校現場で働く傍ら、リアルな学校現場の様子や業務改善につながる情報をSNSなどで発信中。
X:@9ivs4Lw3xrOHstW
この記事の執筆者:大塚 ようこ
子ども向け雑誌や教育専門誌の編集、ベビー用品メーカーでの広報を経てフリーランス編集・ライターに。子育てや教育のトレンド、夫婦問題、ジェンダーなどを中心に幅広いテーマで取材・執筆を行っている。