
ここでは、まず大切な「前置き」を示したうえで、連続テレビ小説『虎に翼』(NHK)の脚本を手掛けた吉田恵里香だからこそ実現できた、「多くの人、特に若い世代に届けたい」と心から願える魅力と特徴を、3つの項目に分けて記していきましょう。
先に申し上げておくと、この『前橋ウィッチーズ』はいわゆる「魔法少女」×「アイドルもの」のアニメでありつつも、「お色気」描写や「恋愛」要素は徹底的に避けており、だからこそ現代の若者が直面するさまざまな問題に向き合った、挑戦的かつ誠実な作品だったのです。
前置き:「1話切り」をせず、「第2話のCパート」まで見てほしい明確な理由
正直な感想として、この『前橋ウィッチーズ』は、作画や楽曲のクオリティーが高いことを前提としつつも、「第1話は入り込みづらい」作品だと言えます。見る人によっては「必要以上の拒否反応を覚えても致し方がない」特徴があるのです。その理由の1つが「アニメ的な誇張のあるキャラクター」。例えば、口ぐせが「エモエモ最強」や「チョコちゃんカッター」だったり、ことあるごとに「無理」という言葉を連発する口の悪い女の子もいます。それらと相対するような、落ち着いた言動の女の子もいるのですが、それにしたって極端なのは間違いありません。
あらすじに「強引さ」を感じる人もいるかもしれません。女の子たちがいきなり「魔法のお花屋さん」の店員となり、歌って踊るパフォーマンスを経て、お客さんのお願いをかなえたことで貯まる「マポ(魔法ポイント)」を集めて、自分たちは「魔女」を目指す……という設定からして、「要素が渋滞しており、説明的すぎるし都合が良すぎ」と感じる人もいるでしょう。
さらにギョッとする特徴は、キャラクターたちによる「暴言」です。第2話の終盤および、第6話のCパート(エンディング曲の後のシーン)で飛び出した言葉の数々は、ストレートに「人の心を傷つける」ものでした。
しかし、この『前橋ウィッチーズ』のすごいところは、そうした「キャラクターの極端な口ぐせ」「都合のいい設定」「暴言」という賛否両論を呼ぶ要素が、後に「反転」し、ある意味では伏線として回収され「意味が変わってくる」ことです。
それがはっきりするのが、第2話のCパートで明かされる、とある「秘密」です。それまでは正直「ノレない」と思っていた筆者も、ここで襟を正しました。これは、アニメファンの大人が見るだけではもったいない、現代にふさわしいメッセージ性を打ち出した作品なのだと……。
そのため、第1話を見て「合わない」と思った人も、第2話のラストまでたどり着いてほしいと、強く願わずにはいられないのです。
さて、ここからは、この『前橋ウィッチーズ』が提示した、現代の若者が向き合う問題や、『虎に翼』との共通点について記していきましょう。
※以下、『前橋ウィッチーズ』の決定的なサプライズは避けたつもりですが、一部内容に触れています。