40歳目前「安定を手放すのが怖い」。それでもワーママが退職を決められた理由

40歳の節目で多くの人が感じる不安や迷い。外資系企業で働く中、「小1の壁」と「40歳の壁」が重なり、会社員生活を手放す道を選択したワーママの体験談をご紹介!

会社員を辞めるまでの思考の変化

大前提として、私は会社員時代の仕事が好きだったのです。

モノを開発する企業勤めだったので、「この製品によって多くの顧客が幸せになる未来」に貢献していると思えたし、ホワイト企業で待遇も良い。2回育休を取っても、キャリア形成できる道が残っていました(ただし、転勤が必要)。

ところが、子どもを産んでワーママになり、それまでの社内的マジョリティ(転勤辞令も受けてバリバリ働く)からマイノリティ(保育園のお迎え時間を含め、子どもの都合によって会社の要望通りに動けない)になり、私の考えも変わっていきました。

特に「40歳の壁」の到来で、強制的に「40歳以降の働き方」を深く考えるようになりました。

いくら待遇が良い仕事でも、仕事の内容や量や時間にコントロール権がないのはつらい。年を取るほど思うように働けないことも増えるはず。それなら、ライフイベントに合わせて、働き方のサイズを適宜変更できる仕事へとシフトしていったほうがいいのではないか。

そろそろ舵を切り直す時期なのかもしれない。そんな考えが、次々と頭に浮かびました。加えて、そのときの私はこんなことも感じ始めていました。

・会社のメンバーと話してもおもしろくなくなった(話が合わないと感じる)

・今の業務が将来につながると感じられなくなった(このままがんばって元のマジョリティ的な働き方に戻りたいわけではなくなった)

・発信業によって周りにいる人が多様化し、会社員以外の働き方もできそうな気がしてきた(さまざまな生き方のモデルケースが増えた)


ああ、これはもうタイミングが来たのだ。そう思った私は、2019年末に上司に退職の意思を伝えました。

会社員を辞めて何をするのか

会社員を辞めて手に入れたかったのは「試行錯誤する時間」です。そこで、「40歳の壁」と向き合うべく、1〜2年間サバティカルタイムを取ることにしました。

「サバティカル(英:sabbatical)」とは、使途に制限がない職務を離れた長期休暇のこと。これまで、時間がなくて思う存分できてなかった、ヨガ、執筆、ものづくりなど、やりたいことを学びながら実施することにしました。

なぜ、1〜2年間にしたのか? 「サバティカル休暇制度」が取り入れられている企業(パートナーの海外駐在帯同や介護、大学院進学などを理由に認められている)の多くは、期間を1〜2年としているからです。

このことから、「2年を超えると会社員として復帰は厳しいと社会は思うのか」と気づき、同じ期間を自主的に取得してみることにしたのです。

いきなり退職するのはハードルが高いと思うので、万人に通用するやり方ではないかもしれません。そのため、保険をかけることにしました。

私が勤めていた会社には、直近2年間で一定以上の評価があった場合、退職後5年以内なら再雇用するという制度がありました(就労条件は変わる可能性あり)。

そのため、退職の意思を上司に伝える際、「この制度を使って会社に戻る可能性もある」と話し、契約書を交わして退職しました。

こういった保険があると、ちょっと安心ですよね。

調べてみると、会社には意外といろいろな制度があります。サバティカル休暇はないか? 辞めるなら戻る制度はないか? など、情報収集してみるのがおすすめです。

制度がない場合は、在職中に何か資格を取得しておくなど、個人で代わりの保険を用意するのもいいのでは? と思います。

あとは、現役のうちに転職市場から自分の評価を受けておくことも大事。「今辞めても再就職できるのか?」を知っておけば、精神的な安定につながります。

こうして私は、会社員に戻りたくなったら戻るかもしれないし、そのまま個人で働くかもしれないという2つの可能性を頭の隅に入れながら、65歳以降の定年のない人生のため、サバティカルタイムを取って少しずつ経験を積んでいくことに決めました。
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尾石晴 プロフィール
株式会社ポスパム代表。大学卒業後、外資系メーカーに16年勤務。転勤5回、管理職の経験あり。2020年に退職し、独立。2年間のサバティカルタイムを経て、現在は大学院博士課程(感性学)に在籍中。2013年、2016年生まれの男児2人の母。最新刊は『「40歳の壁」を越える人生戦略』(ディスカヴァー)。
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