すぐに解決しようと急がない
このときに急がず、そばにいる時間を増やして話をしてくれるまで待つことが大切です。不登校の子どもは他の子と同じように学校に行けないことで自信喪失の状態になっています。いわば心の根っこが折れやすくなっているのです。
「事実、最近は心が傷ついても自分で修復することができない子どもが増えてきた」というのは長く高校教師として生徒たちに向き合ってきた野々さん。
親世代とは全く違う価値観と思考を持っている子どもたち。ネット社会が発達しSNSで他者と自分を比べやすい環境の中で、ただでさえ不安定な思春期に自分を見失っている子どもが少なくないと言います。
その上、学校に行けないことで子どもの精神状態はグラグラ。自信をなくした状態のまま登校しても遅かれ早かれまた行けなくなる可能性は高い。
ですから、目指すゴールは、「学校に戻すことではなく、子どもが自分のことをありのままでいいと認め、もう一度外の世界に挑戦することだと思う」と野々さん。
そのためにまず親にできることは、そのような子どもを受け止め、心の根っこを育むことだと言います。
焦らず、子どもを信頼して、見守る
また、不登校の子どもが元の生活に戻るまでのペースもさまざま。1年以内に回復する子もいれば、2~3年かかる子もいる。しかし、子どものペースで自分の心を癒しつつ、子どもに合った場所が見つかれば、また社会と関わるようになります。
その1歩を踏み出すためには、焦らず、子どものタイミングで子どもに合った場所が見つかるまで待つ必要があるのです。
「そんなことを言っても、勉強しなくて大丈夫?」「このまま引きこもったらどうしよう……」そう思うかもしれませんね。
でも、親が不安だと子どもはその不安を敏感に感じ取ります。
東さんも、「今、『行きたくない』に向き合わなかったら、いずれそれはさまざまなカタチで出てくる。『行く/行かない』で悩むより、笑顔で毎日を過ごすことを考えてみては?」とアドバイスします。
中学生の15人に1人が不登校を経験し、10人に1人が通信制高校を選択する時代です。昔とは違って、不登校からつながる将来へのルートはできてきています。だから、レールから外れたと焦る必要もないのです。学校に行けるかどうかより、生きる力が育つことが大切なのではないでしょうか。
子どもが学校に行きたくないと言ったら、まず親は「焦らず、子どもを信頼して、見守る」。
それは口で言うほど簡単なことではないかもしれないけれど、子どもの心の根っこを育てるためにも、親自身がアップデートしていくこと。
自分メンテナンスを心がけ、自身の心の根っこを太くすることも大切なのだとお2人の話を聞いて感じました。
この記事の執筆者:中曽根 陽子
数少ないお母さん目線に立つ教育ジャーナリストとして、紙媒体からWeb連載まで幅広く執筆。海外の教育視察も行い、偏差値主義の教育からクリエーティブな力を育てる探究型の学びへのシフトを提唱。お母さんが幸せな子育てを探究する学びの場「マザークエスト」も運営している。『<中学受験>親子で勝ちとる最高の合格』(青春出版社)、『1歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)など著書多数。



