深刻な教師不足、それによる若手の負担増加……。「休めない先生たち」
——学校の中でのパワハラなどに対する意識はどのように感じますか? 現在、多くの企業ではパワハラの指摘を受けないように、細心の注意を払う管理職も少なくありませんが……。「あくまで僕の感想になりますが、やはり学校、特に職員室は閉鎖的な空間なのでハラスメントのようなことが起こりやすいのかもしれません。また、多くの先生は大学を卒業してすぐに学校に就職しており、一般企業の雰囲気を知ることがないので、もしかしたらハラスメントに対する意識も低いかもしれませんね。
ハラスメントかどうかは微妙ですが、若い人ほど『経験だから』と仕事を任されがちで、断れない雰囲気があると思います。例えば学校行事の担当を任されたり、校内研究の論文作成を任されたり……。こうしたことは多くの学校でのあるあるな風景だと思います。
そして学校行事がある時期はさらに職員室全体がピリピリとした空気に包まれます。運動会などの前は、大人に対しても子どもに対してもピリピリしていることは感じますね」
——仕事を断れない雰囲気がある、となると、1年を通して子どもたちと向き合う先生のお仕事に「オフシーズン」はないのでしょうか。
「小学校では、夏休みなどを使って長期休暇を取っている方はいます。
しかし、中学校で部活動の顧問になると、お盆休みや年末年始休暇以外は土日も心が休まるタイミングはあまりないですね。
僕は中学校での勤務を経て現在小学校にいるのですが、中学校時代は土日も部活の指導が当たり前でした。大会理事に選ばれたりすると、自分の学校が敗退しても、大会の運営のために大会会場に呼ばれ続けることもあります。
小学校も中学校もどちらも大変な職場ですが、小学校の先生の方が週末はみんなで飲みに行くなど、息抜きができる時間が確保できていると感じます」
「ICTの導入」は先生たちの負担を軽減したか
——最近はICTが導入され、『業務が効率化される分、子ども一人ひとりと関わる時間を増やそう』という話も聞きますが、実際、現場ではどのように感じられているでしょうか。「ICTが導入されたことにより、業務の進め方は効率化されているかもしれませんが、業務量は軽減されるわけではなくむしろ増えています。そのため、子どもたちとの関わりをこれまでより増やすというのはどこの学校もなかなか難しいのではないでしょうか。
僕は学校でICT関連の担当を任されることが多いのですが、校内のWi-Fi接続や学習用アプリの業者とのやりとり、機器の故障トラブルなどの新しい業務や対応が増えました。
ICT担当ではなくとも、全ての先生が毎年のようにアプリの使い方を覚えたり、パスワードの管理をしたりしなければならなくなっています。
また、文部科学省は『これまでの学びをクラウド上に蓄積し、現在の学びに役立てたり自分の成長を振り返ったりできるようにする』ことを求めていますが、そういった理想的な使い方ができている学校も、ほとんどないのではないでしょうか。現状では、まだまだICTを使うことに精いっぱいな学校が多いと思います」
想像以上に過酷な「職員室のドアの向こう」。本来子どもの指導に全力を注ぎたいはずの先生たちが、さまざまなストレスやジレンマに板挟みになっているのが現状です。
次の記事では、現役教師が思う「働きやすい学校」、それを左右する管理職の質についてお話しいただきます。
教員ブラックさん プロフィール
教師として学校現場で働く傍ら、リアルな学校現場の様子や業務改善につながる情報をSNSなどで発信中。
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この記事の執筆者:大塚 ようこ
子ども向け雑誌や教育専門誌の編集、ベビー用品メーカーでの広報を経てフリーランス編集・ライターに。子育てや教育のトレンド、夫婦問題、ジェンダーなどを中心に幅広いテーマで取材・執筆を行っている。



