
パリではこうした悩みを少しでも軽減しようと、近年は男性用の「小便器」が次々と登場しています。ところが、これがフランス国内で思わぬ物議を呼ぶことに。フランス在住の筆者が詳しくご紹介します。
パリ五輪でも登場した男性用トイレ

中でも目立っていたのは、「完全オープン型」の男性用トイレ。仕切りや個室のない独立型の小便器で、中央に丸い穴が空けられ、複数人が同時に用を足せるという特徴的なデザインをしています。これらのトイレはパリ五輪が終わった後に全て撤去されました。
利用者からは「問題ない」という声があった一方で、「急いで用を足したいのに、使う勇気が出ない」といった意見もあり、賛否が分かれていたそうです。パリのトイレ事情を象徴する出来事だったと言えますね。
実はフランスでは、こうした前衛的なデザインの男性用トイレがほかにも存在しています。それも臨時ではなく、常設用として新たに設置されたもの。パリでは2018年頃から導入が始まりました。
「花壇」付き!? フランスのエコトイレ

このトイレは24時間利用可能で、尿を「乾燥した藁(わら)に貯めて堆肥に変える」というエコ設計になっています。さらに上部には花壇が付いていて、街の景観を保つための工夫が。また水の量や清掃の手間が減ることで、自治体のコスト削減にもつながるのだそうです。
しかしフランスでは、これが「景観を損ねる」と大きな物議を醸しました。2018年にはパリ市内で5基が設置されたものの、中心部で「住民の反感を買っている」と、現地メディアで大々的に報じられたこともあります。
「ユリトロトワール」は下水管に繋がっていないタンク式で、清掃までに約200回の使用が可能です。当時は予想外に利用者が多かったこともあり、景観問題以上に悪臭の原因になったと報じられました。近隣住民の反発が強かった一方で、実際に使う人が多かったのも事実のようです。
その後、こうした批判が相次いだことを受けて、パリ市内では「ユリトロトワール」を含むほとんどの路上男性用トイレが撤去されました。現在ではフランスの地方都市に一部設置されているとのことですが、路上放尿に関しては今もまったく解決の気配がありません……。ちなみに、パリ市内で路上に放尿すると、68ユーロ(約1万8880円)の罰金が科される可能性があります。