ヒナタカの雑食系映画論 第163回

『マインクラフト/ザ・ムービー』が、ゲーム原作映画として「大正解」を叩き出した3つの理由

公開中の『マインクラフト/ザ・ムービー』がゲーム原作映画の「大正解」と言える素晴らしい出来栄えでした。その3つの理由や、元のタイトルに「重要な要素」が示されていたことなどを解説しましょう。 (※画像出典:(C)2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.)

1:ダメダメな大人と子どもたちが「異世界転送」しちゃった話!

今作が、ゲームを知らなくてもおすすめできる理由の筆頭は、「ダメダメな大人と子どもたちがとんでもない世界に迷い込んじゃった!」というシンプルなプロットだからです。
マイクラ映画
(C)2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
いわゆる「異世界転送(転移)もの」であり、劇中のキャラクターが「異世界に迷い込んでとまどいながらも、何とかしようとする」様が観客の心理と一致するため入り込みやすいですし、先に転送された「先輩」からルールを「教わる」展開も分かりやすいエンタメになっています。

キャラクターも個性豊かで、すぐに特徴を覚えられます。「先に転送された採掘マニアの男」「すっかり落ちぶれた元人気ゲーマー」「発明家を夢見る少年」「しっかり者のお姉ちゃん」「子どもたちを見守る移動動物園の園長」という5人は、ちっとも「ヒーロー」なんかじゃない、いずれも欠点を持つ人たちです。

そんな彼らが「チームを組み、互いの欠点を補うように連携し冒険をする」という流れが、初めこそクスクス笑えるコメディーに、そのうち少年漫画的なアツい展開につながっていきます。関係性の「ゆるさ」込みでほほ笑ましく見られるでしょう。
 

また、キャラクターの多くが「初めは冷めている」ことも、かなり重要だったと思います。予告編でも見られる「あっ、そう」「私この人無理だ」というリアクションは、「この世界や設定にノレていない」ことそのもの(本編では字幕の内容は少し異なります)。

彼らが、この場所でのルールを学び、いつしか知恵と勇気を持って問題に立ち向かう、その流れにグッと来るのです。あるいは、あまりにも常識はずれでクレイジーな世界観に翻弄(ほんろう)され、それでも問題を文字通り“力技”で乗り切るなど、「半ばヤケクソ」っぷりも含めて笑えるコメディーに昇華されています。

個人的に特にうれしいのは、ジャック・ブラックとジェイソン・モモアというスター俳優2人による、「ひげが似合うおじさん2人のブロマンス(友情)」要素
マイクラ映画
(C)2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
「初めは反発し合っていた2人がいいコンビになっていく」という王道の「バディもの」の魅力もありますし、今回はダメなところも含めて2人ともチャーミング。大人と子どもが「対等」な立場でチームになるというのも、今の時代のエンタメとしてふさわしいものでした。

2:原作ゲームの「クリエイトする」魅力がたっぷり

原作ゲームで重要なのは、何よりも「クリエイト(創造)する」こと。同作は建物を建てたり武器を作ったりする、「サンドボックス型(砂場のように自由に遊べる)」のゲームの代表格であり、今作でもそのゲームの面白さがしっかり打ち出されています。
 

例えば、「初めは武器の使い方を間違えていたけど、その特徴を知れば有効活用できる」「建物を素早く建て屋上に登り危機から逃れようと画策し、『初めてにしては上出来』と褒められる」ことなどがそうです。

原作ゲームは「あらかじめ決まっている大きなストーリーがない」作品であり、プレーヤーが「主体的に目的や物語を作っていく」ことにも魅力がありました。だからこそ前述した「異世界転送もの」にして、映画のキャラクター=ゲームのプレーヤーとほぼ同一視できるアイデアは、理にかなっているとも言えるのです。
マイクラ映画
(C)2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
さらに、『マインクラフト』で特徴的な「ゾンビ」のほか、「ピグリン」や「スケルトン」といったキャラクターがやはり「リアル」寄りの造形で再現されているのもゲームファンには嬉しいところ。「森の洋館」の細かい作り込みにも注目です。

このほか、ゲームの「小ネタ」的な要素も多数込められており、1度見ただけでは気付けないほど。「あのキャラがこんなことになるの?」という意外性もありますし、映画独自のアイデアそれぞれが、やはり“褒め言葉”としてクレイジーなものに仕上がっていました。
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