名字の種類は世界で一番多い

INSEE(フランス国立統計経済研究所)のデータによると、フランスで一番多い名字は「マルタン(Martin)」。次いで多い順に「ベルナール(Bernard)」「トマ(Thomass)」「プティ(Petit)」「ロベール(Robert)」となっています。
フランスで名字が使われるようになったのは10世紀。当時の人口増加に伴い、村人たちを区別するために導入されました。名字の由来を見てみると、32%が父方の祖先のファーストネーム、30%が地名、そして18%が職業に関連しています。ユニークな例としては、先祖の背が低かったことを意味する「プティ(Petit)」さん。「デュボワ(Dubois)」という名字も多いのですが、これは森の近くに住んでいた先祖に由来しているそうです。
1900年には52万種類だった名字も、戦後の移民の流入によってさらに多様化し、現在では約150万種類まで増加しています。そのためファーストネームは典型的なフランス名でも、名字に祖国のルーツが刻まれている人を非常に多く見かけます。
フランス人にとって、日本人と言えば「この名前」
「ピエール」や「セリーヌ」がフランスらしい名前だとするならば、日本人の名前にはどんなイメージがあるのでしょうか。筆者がフランス人と話していて感じるのは、「日本人クリエイター」の名前がダントツでポピュラーであること。特に圧倒的な知名度を誇るのが、『ドラゴンボール』の作者である鳥山明さん、『ベルセルク』の作者である三浦健太郎さん、そしてジブリ映画監督の宮崎駿さんです。いずれの作品もフランスで大ヒットを記録したため、本当に多くの人に知られる存在となりました。
その影響もあり、フランス人にとって「日本人の名前」といえば、「アキラ」や「ミヤザキ」が真っ先に思い浮かぶそうです。これは発音しやすく、フランス人にも覚えやすい言葉であることが関係しています。
さらに、カンヌ映画祭の常連・是枝裕和監督や、フランス語に翻訳された作品の多い村上春樹さん、フランスを何度も訪れた故・安倍晋三首相の名前もよく知られています。やはりフランスと縁の深い人物ほど、その名前が広く認識されているようですね。
伝統的な名字と時代を映し出す名前
名前や名字は、その国の文化を物語っていると感じます。かつて宗教色が強かったフランスも、現代では国際的な感覚を意識したものや、他国の文化に影響を受けたファーストネームが増えてきました。日本にも「らしい」名前がたくさんありますが、時代とともに変化している点はフランスと共通しているかもしれません。一方で、名字がどこの国でも変わらずに受け継がれているのが面白いところ。その意味や由来を調べていると、土地の歴史や文化が浮かび上がってくるようで、つい引き込まれてしまいます。
この記事の筆者:大内 聖子 プロフィール
フランス在住のライター。日本で約10年間美容業界に携わり、インポートランジェリーブティックのバイヤーへ転身。パリ・コレクションへの出張を繰り返し、2018年5月にフランスへ移住。2019年からはフランス語、英語を生かした取材記事を多く手掛け、「パケトラ」「ELEMINIST」「キレイノート」など複数メディアで執筆を行う。