偏差値の呪縛から抜け出そう
実際こんな事例がありました。ご自身が御三家出身のKさんは、実力相応校で甘んじるのではなく、少しでも偏差値が高い学校を目指して頑張ることに、受験勉強の意味があると考えていたそうです。その結果、お子さんに無理を強いることになり、成績が伸び悩むお子さんとの関係は悪化していきました。そんな6年生の4月、講演会で筆者の話を聞いてくださり、大切なのは偏差値の高い学校を目指すことではないと気付かれたようです。その後、学校選びをし直し、お子さんが心から行きたいと思える学校を見つけられ、本当の志望校合格という目標に向かって親子で一緒に頑張り、見事お子さんの第一志望校に合格されました。
昨夏に出版した拙書『<中学受験>親子で勝ちとる最高の合格』(青春出版社)も読んでくださり、受験軸のワークシートを活用してお子さんと話し、何を目指して何を頑張るのかを確認したそうです。
受験軸とは、なんのために受験をするのかという目的と、その目的をどうやって達成するのかというスタンスのことです。そこを話し合うプロセスを通してKさん自身が抱えていた偏差値の呪縛から解放されていったそうです。
初めてお会いした時は、まさに受験沼にハマり、暗い顔をされて涙ぐまれていたのですが、それから約1年。見違えるような笑顔でうれし涙を流して報告してくださって、筆者ももらい泣きしてしまいました。
他人ではなく自分が立てた目標が、成績を上げる原動力になる
本書で筆者が1番伝えたかったことは、「目標に向かって頑張る」そのこと自体に価値があるということです。実際、目標を持つことが、勉強に対するモチベーションを高めるという、エビデンスがあります。最近出版された『科学的根拠(エビデンス)で子育て 教育経済学の最前線』(中室牧子著、ダイヤモンド社)にも、目標を立てて取り組むことで、成績が改善したことを示すデータが紹介されていました。
書かれていた中で特にお伝えしたいのは、成果を出すには、他人ではなく自分が描く理想の将来を明確にすること。そして、その将来を実現するために達成しなければならない目標をリストアップし、それに優先順位を付けて取り組むことが効果的だということです。
中学受験においては、その目標は親子でよく話し合って決めることが大切。そして親の役割は、サポーターとして心身の健康が維持できるように見守ることです。お子さんがやる気がない、成績が伸び悩んでいるなら、なおさら受験軸を確認し、ここでもう1度目標設定をし直してみませんか?