
公表された2025年度の首都圏の私立・国立中学受験者数は、前年度より100名減の5万2300人。受験率は史上2番目に多い18.1%、平均出願校数は7.44校という結果になりました(データは全て首都圏模試センター調べ)。
過去40年間を振り返ってみると、1回目のピークとなった1991年(バブル景気のピーク時)の「5万1000人」、2回目のピークとなった2007年(リーマンショックの前年)の「5万500人」を上回り、過去最多となった2023年の「5万2600人」と翌2024年の「5万2400人」に続く、過去3番目の受験者数となりました。

埼玉、茨城の受験者数が増加
地域的には、今年は埼玉県・茨城県の受験者数の増加が目立ちました。これは、開智学園グループが、開智所沢中高の開校に伴い、1度の試験で県内外の複数の系列校を出願できるようにしたからです。受験料2万円で2月4日までに試験を最多で6回受けらるようにしたことの影響が大きいと言われています。ですから、開智所沢は新設初年度の前年よりもさらに人気を増していることは確かですが、実際の受験者はこの公表数よりかなり少ないと考えていいでしょう。

実際、今年度受験者数が増加した学校のリストを見てみると、桜丘(東京都北区)、淑徳巣鴨(東京都豊島区)、品川翔英(東京都品川区)、安田学園(東京都墨田区)など、隣接する県からも通いやすい地域の共学校が名を連ねています。
ただ、長年取材してきて、これらの学校は地の利だけでなく、地道に学校改革を続けており、その教育内容が一定の評価を得ているのではないかと思います。共通点は、面倒見のいい中堅の男女共学校であることです。学習面でもサポートが手厚く、大学進学にも期待できるところが、保護者のハートをつかんでいるのかもしれません。
また、国際系と言われる学校も人気です。三田国際学園(東京都世田谷区)と文化学園大学杉並(東京都杉並区)はどちらも英語教育や留学制度が充実している学校です。
文化学園大学杉並は高校でカナダの高校の卒業資格が同時に取れるダブルディプロマコースを初めて開設した学校で、その成果が注目されて近年人気が高まってきています。
三田国際学園も、入学当初の英語力は問わず、All Englishの授業やターム留学などのプログラムで、海外大学進学も狙える学力を育成する学校として人気が定着しています。また、STEAM教育にも力を入れており、2025年春に「三田国際科学学園」へ校名変更することでさらに注目が集まっています。
隔年現象・入学定員の増減・入試日程の変化に注意
また、中学入試でよく言われるのが隔年現象です。これは、前年度の倍率が高くなると翌年は敬遠され、逆にその次の年は受験者数が増える現象を言うのですが、今年度の芝国際(東京都港区)や日本学園(東京都世田谷区)はこれに当てはまります。安田教育研究所の安田理氏によると、大学付属校もこの傾向が強く、今年は慶應普通部(神奈川県横浜市)、立教女学院(東京都杉並区)、青山学院(東京都渋谷区)、早稲田実業(東京都国分寺市)が増加しました。果たして、来年はどうなるでしょう。
反対に、神奈川県では女子のミッションスクールが軒並み受験者数を減らしましたが、これも昨年大幅に受験者数が増えたことの反動なのでしょうか。
受験生の心理としては、人気動向は気になるところですが、裏を読み過ぎて外れることもあります。今は受験回数も増えているので、やはり自分が受けたい学校は受けるべきではないかと思います。
逆に注意したいのは、定員数の変化です。高校入試の定員を減らして中学入試の定員を増加する学校、反対に少子化をにらんで定員を減らす学校など、さまざまな動きが出ていますから、志望校の動向はチェックしておく必要があります。