
その時点でもう「間違いない」のですが、念押しとして申し上げておきましょう。本作は老若男女に文句なしにおすすめできる、映画およびミュージカルの魅力をめいっぱい堪能できる、全方位的に優れたところしかない大傑作だったと……!
1939年の映画(その原作の児童小説やミュージカルの)『オズの魔法使』の前日譚でもあるため、そちらを後でも前でもいいので見ておくのがおすすめですが、物語は独立している上に難しいところが一切ないため、予備知識ゼロでも全く問題なく楽しめるでしょう。
そのため「いいから今すぐ映画館に行ってください。以上!」で終わりにしてもいいほどなのですが、「このことを前もって認識しておくといいよ」というポイントがいくつかあるのも事実です。大きく5つに分けて紹介しましょう。
1:上映時間は2時間41分! でもあっと言う間
本作の最大の注意点は、上映時間が2時間41分と長いことです。言うまでもなく直前のトイレは必須。お子さんと見る場合は特に注意が必要ですし、トイレのために席を離れることもいっそ覚悟しておいた方がいいかもしれません。
そもそもがミュージカルという形式であり、それぞれの楽曲と後述する美術や衣装をじっくりで魅せているからこそ、必然的な長さともいえます。2時間41分という数字を過剰に気にする必要はないですし、「もう終わり?」「あっという間」「短すぎる」とさえ思うことを期待してほしいくらいです。
2:2部作の第1部! それは監督が「致命的な妥協」を避けたから
タイトルからは分かりませんが、本作は全2部作の第1部にあたり、原作のブロードウェイミュージカルの第1幕までの物語が描かれています。キリの良いところまで物語が進むとはいえ、「途中で終わる」ことを前提に見た方がいいでしょう。
とはいえ、2部作で構成したのは、ブロードウェイミュージカル『ウィキッド』の大ファンだったジョン・M・チュウ監督の切実かつ誠実な思いによるものです。自身のInstagramで、「曲を削ったり、登場人物を減らしたりしようとすると、長年にわたって私たちを楽しませてくれた原作に対しての致命的な妥協のように感じました。そうしないため、大きなキャンバスを手に入れるために、映画を1部完結ではなく2部作として制作することにしました」と語っているのですから。

余談ですが、日本での劇団四季による『ウィキッド』の総上演時間は約3時間(2幕構成/休憩20分含む)でした。そちらを見た人も、映画が多大なリスペクトを捧げていること、歌やキャラクターやシーンがカットされていないことはもちろん、より広く深く『ウィキッド』を堪能できることを期待してもいいでしょう。