浴びるようにまとう香水

ただ、「万人受け」を意識して香水を選ぶフランス人はいません。むしろ、自分の好みを最優先し、「これが私!」と香りで自己主張をする人がほとんどです。実際にパリの香水売り場でも、店員さんの「おすすめ」には目もくれず、「この匂いは嫌い、この匂いはOK」とハッキリものを言うフランス人の姿をよく見かけます。
そんなフランスの香水売り場では、店員さんの接客スタイルもまた独特だと言えるでしょう。日本であれば、香水を試す際は軽く1プッシュが一般的です。しかし、筆者がこちらで「香りを試してみたい」と伝えたところ、頭から胸元までなんと5~6プッシュ、まるでシャワーのように浴びさせられたことがありました。普段からこうした付け方をする人は多いので、香水の「減り」も日本よりずっと早いのだと思います。
オフィス、レストランでも香水は当たり前
さらに日本と大きく異なるのが、オフィスやレストランで香水を当たり前のように付けること。日本では香水がNGとされる飲食店もありますが、フランスではむしろ香水をまとうのが自然なマナーとして受け入れられています。彼らはレストランに香水を付けて向かう親たちを見て育ちました。フランスのメディアも、「ディナーシーンに合う香水○○選」などと特集を組んでいます。こうした背景からも、フランス人の香りに対する許容度の高さがうかがえます。
また、香水を付けない人が香水愛用者を「臭い」「キツイ」と非難することもありません。体臭の違い、香水文化の歴史、香りへの耐性など、さまざまな要因があるのでしょうが、日本人との嗅覚の違いは、フランスで暮らしていて強く実感することの1つです。
この記事の筆者:大内 聖子 プロフィール
フランス在住のライター。日本で約10年間美容業界に携わり、インポートランジェリーブティックのバイヤーへ転身。パリ・コレクションへの出張を繰り返し、2018年5月にフランスへ移住。2019年からはフランス語、英語を生かした取材記事を多く手掛け、「パケトラ」「ELEMINIST」「キレイノート」など複数メディアで執筆を行う。