フランス人が香水を好むのは「シャワーを浴びないから」ではない。「スメハラ」「香害」が存在しないワケ

外国人がまとう香水は、日本人よりも強めであることがほとんどです。彼らはなぜそれほどまでに香りを身に着けるのでしょうか。香水発祥の地フランスに暮らす筆者が、その理由を深掘りしました。

パリの香水売り場
広大なパリの香水売り場(写真は筆者撮影、以下同)
外国人旅行者から漂う香水の匂いを「キツイ」と感じたことのある人は多いと思います。その強さは、電車の中やお店の空気が一瞬で変わってしまうほど。

日本では、このように強過ぎる香りは「スメルハラスメント」や「香害」として敬遠されがちです。しかし、筆者が暮らすフランスではこうした言葉すら存在しません。むしろ多くの人が香水をたっぷりと身にまとい、それが「人前に出る際のエチケット」とさえ考えられています。

ではフランス人は日常的にどれほどの香りを身に着けているのでしょう。彼らの香りに対する考え方や香水の付け方、さらに好まれる香りの種類を探っていくと、日本人の感覚とは大きく異なることが見えてきました。

体臭の強さは関係するが、「シャワーを浴びないから」は誤解

フランスの人々が香水をたっぷり付ける理由の1つに、「シャワーを浴びないから」といううわさがありますが、これは誤解です。

実際にフランス人と暮らしてみても、周囲のフランス人を観察してみても、ほぼ全員が毎日シャワーを必ず浴びています。フランスの人々は想像以上に清潔ですし、不潔にしていれば嫌われる原因にもなります。

ただ、日本人と大きく異なるのが彼らの「体臭」でしょう。この点については、無視できない違いがあるのも事実。フランス人の多くは、そんな体臭をできるだけ抑えようと香りをまとっている印象を受けます。

もとは「匂い消し」の意味があった香水

フランスの香水メゾン
フランスには香水メゾンが世界一多い
日本人、韓国人、中国人など東アジア系の人々の体臭が薄いことは、実はフランスでもよく知られています。一方でヨーロッパ系やアフリカ系の人々は、私たちとは体質が異なり体臭が比較的強め。シャワーをしっかり浴びていても、汗をかくと途端に匂いが変化してしまいます。

つまりフランス人にとっての香りは、単に「良い匂いをまといたい」という目的だけでなく、「体臭を抑えるための手段」としても機能しているのです。

さらにフランスの人々を観察していると、日常的に使われているのは香水ではなく「デオドラント」であることが分かりました。事実、薬局やスーパーマーケットのデオドラントコーナーは日本に比べてかなり広く、品ぞろえも豊富です。フランス人からは「日本のものだと(香りが弱過ぎて)全然効かないよ!」といった声もあり、フランスならでは需要の高さを感じます。
フランスのデオドラント
フランス人なら誰もが持っているデオドラント(メンズ)
香水を付けない、香水に興味がないというフランス人は確かに存在します。ですが、そんな彼らでも必ず持っているのがこのデオドラント。特に気温の高い春夏には欠かせないアイテムで、1日に何度も使う人が少なくありません。

こうしたデオドラントは家ではもちろんのこと、スポーツジムや旅行先にも持ち歩く人が多いです。香りも強く、ムスクやウッディノートなど、日本のものと比べるとインパクトがかなり大きめ。香水とほとんど変わらない香りを放つため、外国人から漂う匂いが「キツイ」と感じる時は、実はこのデオドラントが関係しているのかもしれませんね。

歴史的にも、香水はトイレのなかったヴェルサイユ宮殿で愛用されていたと言われています。そう考えると、フランスにおける香水文化はやはり「香りを楽しむ」だけでなく、「匂いを消す」という意味合いが強いのでしょう。
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日本人が驚く、フランス人の香水の付け方!
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