
(今回の質問)
ひな祭りに「やってはいけないこと」とは?
(回答)
ひな祭りの風習は地域によって異なりますが、やってはいけないこととして共通するのは、ひな人形を一夜飾りすることと、いつまでも片付けないでいることです。
どういうことなのか、以下で詳しく解説します。
なぜひな祭りにひな人形を飾るのか
ひな祭りの起源は中国から伝わった「上巳の節句」(桃の節句)で、性別や年齢に関係なく、3月3日に水辺で穢れを払い無病息災を願う風習。平安時代に宮中行事として取り入れられ、紙の人形(ひとがた)に自分の厄を移して、川や海に流していました。やがて、人の厄を引き受ける人形(ひとがた)と、平安貴族の子どもたちが楽しんでいた人形(にんぎょう)を使ったおままごとの「ひいな遊び」が結びつき、ひな人形が誕生。当初は男女一対の紙製で、水に流す流しびなでしたが、人形作りの技術が発達して立派になると、ひな人形は流すものから飾るものへと変化していきました。
江戸時代に、上巳の節句が五節句の1つに制定されると、男の子の「端午の節句」と対になる女の子の節句として定着。ひな人形を飾って女の子の健やかな成長を願うことから「ひな祭り」と呼ばれて親しまれるようになったのです。
一夜飾りはNG! ひな人形を飾り始める時期
ひな祭りには春の訪れを祝う意味もあるため、二十四節気の「立春」(暦の上で春が始まる日。2月3日頃)を迎えたら飾り始めてもよいといわれています。また、ひな祭りは水に関係する行事なので、二十四節気の「雨水」(雪から雨へと変わり、雪解け水で大地や川が潤う。2月18日頃)に飾り始めると良縁に恵まれるという言い伝えもあります。いずれも、その節気に入る日や吉日を選ぶことが多いです。
一方、前日に飾るのは「一夜飾り」といい、葬儀の準備を連想させて不吉なので避けるようになりました。
ひな人形はいつ片付ければいいの?
ひな人形は、ひな祭りが済んだらすぐに片付けた方がよいといわれています。ひな人形には、わが子の厄を引き受ける役目があるので、厄を移した人形を早く片付け、災いを遠ざけた方がいいからです。また、きちんと片付けができるようにしつけることもできますし、婚礼の様子を模したひな人形を娘の結婚になぞらえ、早くしまうほど早く片付く(早く嫁に行く)ととらえることもできます。こうしたことから、「ひな人形を早くしまわないと、嫁に行き遅れる」という言い伝えもあります。
もう少し飾っておきたいという場合には、春の訪れを祝うという意味で考え、3月中旬、遅くとも二十四節気の「春分」(暦の上では春の半ば。3月20日頃)までにはしまうようにしましょう。季節の行事は、季節感を大事にするからです。
なお、地方によってはひな祭りを月遅れの4月3日に行ったり、旧暦の3月3日までひな人形を飾っておいたりするところもあるので、その地の習わしを大切にしてもいいでしょう。
このように意図をもって片付けるので、面倒だからと片付けないでいるのはNGです。
この記事の筆者:三浦 康子
和文化研究家、ライフコーディネーター。わかりやすい解説と洒落た提案が支持され、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、ウェブ、講演、商品企画などで活躍中。様々な文化プロジェクトに携わり、子育て世代に「行事育」を提唱している。著書、監修書多数。