絶妙なジャンルMIXと高い中毒性。決して“守り”に入らないEXOの音楽
矢野:では、ここからは音楽の話へ! 今回お話しするにあたって、僕も改めて曲を聞いてみたのですが、先入観を覆されました。正直に言うともっとベタといいますか、“ゴリゴリ強め”K-POPというイメージがあったので(エリの皆さんごめんなさい)。でも意に反しておしゃれな曲がとても多かった。音が洗練されている! と思ったんです。ゆりこ:EXOほどいろいろなジャンルの音楽を攻めながらもわが物にしているグループはいないかもしれません。言葉を選ばずに言うと、タイトル曲には「フツーの曲」がほぼない。さらっと聞き流せない引っ掛かりがあるからこそ、中毒性も高めです。デビュー時、グループのお披露目として出したプロローグシングル『WHAT IS LOVE』からしてなかなか常軌を逸していましたもん(褒めています)。 矢野:側は王道、でもやっていることは前衛的……なかなか珍しいハイブリッドですね。僕も『WHAT IS LOVE』を聞いてみたのですが、ゆりこさんの言わんとすることが分かります。「さあ皆さん、今度デビューするグループはこちらです」と紹介するには少々“ルーキー”感がないというか、まるで往年の名曲を歌い上げるベテラン歌手のような玄人感が強いです。このギャップに惹かれてしまうのかもしれません。
ゆりこ:『WHAT IS LOVE』はグラミー賞も獲得しているアメリカの著名プロデューサー、テディ・ライリーさんが手掛けているのですが、フレッシュな新人ボーイズグループのお披露目曲で「こう来る?」と思うスローなテンポのR&B曲なんです。大人のボーカルグループにねっとり歌わせたくなるような。それを10代やハタチそこそこの男の子たちがソウルフルに歌い上げていてビックリしました。相当歌えるグループだ、ということを先制パンチで世に知らしめてきた感じでしたね。ちなみにテディ・ライリーさんは近年のK-POPの一大トレンドにもなった「ニュージャックスウィング」を確立させた人でもあります。
矢野:テディ・ライリーさん、NJZ(現:NewJeans)の日本デビュー曲の回でも話題に出てきた方ですね。EXOのデビュー曲にもつながってくるとは。EXOの楽曲もブラックミュージックの影響が強いのでしょうか?
ゆりこ:ベースにはあるでしょう。ただ、表面に分かりやすく出てこない感じがEXOっぽさだと思います。曲の最初と最後の印象がガラッと変わるような曲も多いですし、「こんなの聞いたことない」という部分が用意されている。代表曲として挙げられるのは『Tempo』。絶妙なところでトンチキソングにならずにまとまっている奇跡。編曲者さん天才すぎるのでは!?
矢野:トンチキソング(笑)。
ゆりこ:チェンさんの「I can't believe」というパワフルボイスから始まるのですが、それだけで血が沸る。私は『Tempo』にクイーンの『ボヘミアン・ラプソディ』に通じるものを感じています。あらゆる要素が混在していて、声が楽器のように美しく重なる。文章だけで説明するには一番難しい曲の1つです。もう聞いてほしい! 矢野:ヒップホップ、R&B、ポップス、歌謡曲など、いろいろなジャンルの曲の要素を感じます。そして、アップテンポの曲かと思ったら、途中で急にピアノが入ってきてアカペラコーラスになるなど、展開も多め。これはどう考えても、聞き飽きることはなさそうですね。
ゆりこ:他のアーティストの場合、普通はタイトル曲(シングル曲)に分かりやすい売れ筋を持ってきて、一方アルバム収録曲では新しい曲調に挑戦したり、遊んだりするケースが多いと思いますが、EXOは逆。タイトル曲こそ、とがりがちなので、アルバム収録曲はシンプルなポップチューンやじんわり沁みるバラード曲も多いんです。『Wait』『EL DORADO』『No Makeup』などがおすすめです。 矢野:アルバムの曲までチェックすると新たなお気に入りソングが見つかる可能性がありますね。むしろタイトル曲より刺さったりして(笑)。
ゆりこ:十分にありえます。どれでもいいので、気になるタイトル曲が入っているアルバムを1枚まるっと聞いてみてほしいです。誰のボーカルで始まるか、誰のラップが目立つかなどによっても曲の顔が変わってきて面白いですよ。そこから各メンバーへの興味も湧くかもしれません。
矢野:そういえば前回のKAIさん以外、あまりメンバーの話はしませんでしたね。そのあたりも知りたいです。
ゆりこ:次にお話ししましょう。永遠に続けられるかもしれないEXOトーク。
矢野:今回はEXOの記録や音楽面を中心に、“いかに”スゴいのかを中心に紹介してきました。そして僕の頭に残る最後のクエスチョンは「EXOは“なぜ”スゴイのか」です。次回は記録や数字では説明できない魅力の部分についてフィーチャーしてみたいと思います。
【ゆるっとトークをお届けしたのは……】
K-POPゆりこ:音楽・エンタメライター。雑誌編集者を経た後、渡韓し1年半のソウル生活を送る。帰国後は、K-POPや韓国カルチャーについて書いたりしゃべったりする「韓国エンタメウオッチャー」として、雑誌やWebメディアなどでの執筆活動や、韓国エンタメ情報ラジオ番組『ぴあ presents K-Monday Spotlight』(TOKYO FM)でパーソナリティーを務めるなど幅広く活躍中。
編集担当・矢野:All Aboutでエンタメやビジネス記事を担当するZ世代の若手編集者。物心ついた頃からK-POPリスナーなONCE(TWICEファン)&MOA(TOMORROW X TOGETHERファン)。