EXOが韓国で社会現象となった「ウルロン期」のリアル
ゆりこ:EXOと同じ2012年デビュー組といえば『PRODUCE 101 SEASON2』で話題になったNU’EST、VIXX、BTOB。前年には、BOYNEXTDOORのプロデューサーとしても活躍中のZICOさんが所属するBlock B、今でも3人で活躍中のB1A4もいます。どのグループも魅力的だったし、しっかり人気もあった。私は2010年デビューのINFINITEというグループも応援していましたが、「どうかEXOとはカムバが被らないでほしい!」と祈っていましたよ。ファンダムの規模が桁違いでしたから。合同ライブに行ってもEXOへの歓声の大きさは他と比べものにならない。矢野:その圧倒的な“覇者感”、いわば近年のBTSみたいな感じですか?
ゆりこ:ファンでない人もグループ名と1曲ぐらいは知っている、という点では今のBTSと近しいかもしれません。ただ個人的にずっと思っていることなのですが、BTSとEXOはあらゆる軸やストーリーが違い過ぎてそもそも比較対象ではないという感覚もあります。あえてBTSを「世界中の老若男女に認知されているポップスター」と見るなら、ウルロン期のEXOは「リアコ製造機」でした。若年層女性を中心に“本当に恋しちゃっている”感じでしたね。その分、正直危うさもありました。“サセン”と呼ばれる悪質な追っかけも、当時は他グループより目立っていたと思います。
矢野:サセンは「私生活(サセンファル)を追い回すファン」の略称ですよね。その過激な行動から困っているK-POPアイドルも少なくないと聞きます。社会現象となるような熱気のあまり、EXOファンもヒートアップしていたのでしょうか。
ゆりこ:特に韓国でのライブや収録イベントに行くと、命の危険を感じるほどファンの熱気、いや殺気がすごかったです。気を抜いたら本当にけがをするぞという緊張感。念のためフォローしますと、2023年の仁川インスパイア アリーナでのファンミーティングでは、さすがにみんな大人になっていましたよ。私も周りのエリ(EXOファンの略称)も。
矢野:一時期はかなりハードだったんですね。そのような状況を、年配の方やファンではない人は遠くから見ている感じでしたか?
ゆりこ:なんせ自分が“ど真ん中のファン”だったので、みんなが「こうだった」と断言できませんが、ソウルの街を歩くと『Growl(ウルロン)』が至る所で流れているほどはやっていましたし、テレビ番組でも芸能人が歌ったり、メンバー脱退時もニュースで報道されたりで大騒ぎ。もはや韓国を挙げての社会現象だったと言っても過言ではないと思います。
矢野:まさに「国民のアイドル」という感じだったんですね。
ゆりこ:そう、最強で無敵な国民のアイドル。EXOは韓国のアイドル輩出企業の総本山とも言えるSMエンターテインメントが、多くの練習生の中から選びに選び抜いたエース、秘蔵っ子で構成された“エリートグループ”です。個人的には過剰なルッキズムには反対ですが、それは別として……EXOはビジュアルも完璧で、あらゆるタイプのイケメンがそろっています。そのような表面的な要素や条件から、どうしても“王道アイドル”としての側面に光が当たってしまいがち。でもEXOがスターたるゆえんはその音楽にあります。