AIに負けない子の育て方 第20回

「中学受験からの撤退」を決断する前に考えておくべき、後悔しないための判断基準

とりあえず始めた中学受験。やってみたら、成績が伸び悩み、親子関係も悪化。泥沼にハマって撤退を考える瞬間もあるでしょう。撤退を決断する前に知っておきたいこと、考えておきたいこととは。

2025年の中学入試も、前年同様の高止まりという予測の中、多くの受験生が試験に挑みました。

筆者も数校の入試会場にお邪魔し、取材しましたが、子どもたちは皆、真剣な表情で入試に臨んでいました。

12歳の子どもたちが合否という結果が出る試験にチャレンジしている姿を見ながら、それぞれがこれまでどんな日々を過ごしてきたのかと思いをはせると、少しうるっとしてしまいます。

とりあえずで始めると受験沼にハマる中学受験

(画像出典:pixta)
中学受験「撤退」が頭をよぎったら考えたいこととは?

中学受験は数年をかけて準備する家庭がほとんどなので、その道中ではさまざまな葛藤が生まれます。

よくあるケースが

・子どもの成績が伸びず、親の方が焦ってしまう
・勉強しない、やる気がない子どもにイライラ
・中学受験を始めてから「親子ゲンカ」が増えて、家庭の雰囲気が悪くなった
・今の受験勉強が、本当に子どものためになっているのか分からない

 
こんな悩みを抱え、1度や2度は、「このまま続けていくべきかどうか、迷った」というご家庭も少なくないのではないでしょうか。
 
あるご家庭では、お子さんに好きなことに思い切り取り組んでほしいという思いから中学受験を選択。しかし子ども1人ではなかなか家庭学習が捗らず、上下する成績に翻弄され、ついつい言葉を荒らげてしまう日々に親の方が疲れ果て撤退を決意しました。

このご家庭も、最初は偏差値なんて気にしていなかったはずなのに、始めてみるとテストを受けるたびに届く成績表に記載される偏差値が気になり始め、知らず知らずのうちに受験の沼にハマっていってしまったのです。
 
受験は全てそうなりがちな面がありますが、中学受験は特に、レールを敷くのは親、実際にやるのは子どもという二重構造の中で、親子で一緒に挑むからこそ起きる葛藤があります。

そして、とりあえずで始めた結果、他者や外部のモノサシに敏感になって振り回され、成績や生活のことでケンカになり、何のために受験していたのか分からなくなっていく……。思いもしなかった事態に巻き込まれて、中学受験の迷路にハマる親子を筆者は何組も見てきました。

最近は共働きの家庭が増えているので、仕事と子どもの受験サポートの両立に悩む家庭も増えている印象です。

撤退も悪くはないが、問題の先送りは意味がない

また、近年中学受験の問題も難しくなっていて、30年以上この世界を見てきた老舗塾の代表は、「当時の最難関校の問題が今の中堅校のレベルになっていて、以前のような暗記型の問題ではなくなっている」といいます。

自分も中学受験経験者だという方もいると思いますが、そんな事情を知らずに数字だけを見て、子どもの成績が上がらないと焦ってしまうと、子どもに過剰な負担をかけてしまうことにもなりかねません。
 
しかし、上下する成績を目の前にして悠然と構えられるわけもなく、中には、途中で中学受験から撤退する決断をするご家庭もあります。

結論として、私は中学受験をしないという選択もありだと思っています。ただ、今の苦しい状態から解放されたいという思いだけで撤退するのは考えものです。

なぜなら、それは、問題を先送りにするだけのことだからです。中学受験から撤退しても、高校受験はやってきます。
 
なので、この機会に、そもそも何のために中学受験をしようと思ったのかを振り返ってみませんか。

そして、中学受験と高校受験の違いをしっかりとお子さんにも話したうえで、どちらの道を選択するのが今の時点でのベストな選択かを決めてほしいと思います。

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中学受験と高校受験の違いを解説
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