自虐ネタはないが、皮肉が満載のフレンチジョーク

皮肉が効いていて、風刺的で、かつシニカルなジョークは、フランスの人々が最も好むもの。一発ギャグやモノマネといった芸風はなく、会話のキャッチボールの中で機知に富んだ発言をすることが重視されます。
例えば、誰かが誰かに食事をごちそうするシーン。「今回は(お金を)出すね」と言われたら、「ありがとう」と返すのが一般的だと思います。しかし、あるフランス人の知り合いは「全然優しくないわ、この人!」と、実際の気持ちとは正反対のことを口にしました。もちろん、周りの人もそれが冗談だと分かっています。このようにあえて正反対のことを言うのも、フレンチジョークの「お約束」の1つです。
映画やドラマで笑うポイントも、日本人とは異なると言えるでしょう。一例として、かつて大ヒットしたフランス映画『最強のふたり』の中に、首から下がまひして動かない相手の脚に「熱湯をかける」というシーンがあります。なかなかに際どい場面ですが、あるフランス人はここで大爆笑していました。日本人なら「えっ」と戸惑うようなシーンでも、フランス人にはがぜん面白く映るようです。
ユーモアのある人は男女ともに人気者
こうしたユーモアセンスは、年齢を問わず「人気者」の条件だったりします。先述したように、フランスでモテる人と言えばやっぱり面白い人。学校ではそれがスクールカーストに影響するといいますし、大人になってからもオン・オフ問わず、さまざまな場面で重宝されます。フランスのユーモアが必ずしも日本人に理解されるとは限りませんが、その逆もまた然りです。特に、日本の「漫才」や「コント」のようなスタイルはフランスには存在せず、コンビ芸人という概念もありません。1人のユーモリストが舞台で語り続けるのが、フランス流のお笑いです。日本の大衆的なお笑いとは違い、「皮肉」や「風刺」が際立っているのもフランスの特徴だと言えるでしょう。
この記事の筆者:大内 聖子 プロフィール
フランス在住のライター。日本で約10年間美容業界に携わり、インポートランジェリーブティックのバイヤーへ転身。パリ・コレクションへの出張を繰り返し、2018年5月にフランスへ移住。2019年からはフランス語、英語を生かした取材記事を多く手掛け、「パケトラ」「ELEMINIST」「キレイノート」など複数メディアで執筆を行う。