「代々木八幡駅」には何がある? 実は“個性的な公衆トイレ”にあふれた街【散歩してみた】
代々木公園と直近の小田急小田原線「代々木八幡駅」は、閑静で目立たない印象がありながらも、実はアート・歴史・文化とさまざまな魅力がある隠れ散策スポット。実際に、降りた先には何があるのか確かめてみました!
代々木公園にもすぐ行ける。個性的なトイレも
撮影当日は曇りでしたが、晴れていれば良い風景になりそう
駅南口の飲食店街を抜けて東方向の「
代々木公園交番前 」交差点に行くと、一気に視界が開けます。
この公園自体はよく整った、ありふれた印象
左折して歩いた先にあるのは「
代々木深町小公園 」。遊具や運動場があり、小さいながらも穏やかでゆったりした休憩スポットです。
代々木公園側にも出口があるので、こちらの出口はもっぱら公園近辺の建物に用事のある人向け
公園の端の方には代々木公園駅の出口も。
ふだんは透明なガラスが人が入ると不透明に…という仕掛けがあるそうなのですが、撮影当日は常時不透明の状態でした
この特徴的な建物は「トイレ」。2020〜2023年にかけて日本財団と渋谷区が実施した共同プロジェクト「
THE TOKYO TOILET 」で建てられたもので、
個性的&芸術的なトイレのデザインには「臭い・汚い・暗い」といった公衆トイレのイメージ払拭(ふっしょく)に加え、性別・年齢・障害の有無を問わず誰もが快適に公共施設を使える多様性社会への願いが込められているそうです。
トイレ巡りをしながら渋谷区巡り……という一風変わった散策もアリかも
代々木深町小公園のトイレは著名な建築家・坂茂(ばんしげる)氏の設計。災害の避難先でも簡単に建てられ、なおかつ建物の機能性や快適さも確保した、紙管やコンテナによる建築で知られています。こうした「THE TOKYO TOILET」の作品は渋谷区内のあちこちに点在しており、2023年の映画『PERFECT DAYS(監督:ヴィム・ヴェンダース 主演:役所広司)』にも登場しています。
物静かな雰囲気で良い公園
そして、代々木深町小公園と道路を挟んだ反対側にあるのが、都心部を代表する大型公園の1つ「
代々木公園 」の西門です。大日本帝国の代々木練兵場が日本敗戦後にワシントンハイツ(連合軍の兵舎・邸宅等)となり、1964年の東京五輪では選手村に……という複雑な変遷を経て、1967年に開園しました。
平日昼もまばらながら散歩中の人がいました
現在では戦争に翻弄された過去を乗り越え、都民の憩いの場として定着。この代々木公園で散歩を満喫してから、代々木八幡駅近くの「八幡湯」で汗を流し、その後は駅周辺の飲食店で食事……なんていう休日コースも組めそうですね!
北口には高級飲食店&歴史スポットが
こちらは店舗も少なく、より住宅街っぽい雰囲気
一方、こちらは駅の北口。南口のにぎやかさに比べると、ややドライな印象です。
こちらの本社ビル自体は2020年に竣工したものです
すぐ目の前には、昨年(2024年)に創業100周年を迎えた老舗エレクトロニクス機器企業「
YKT 」のビルが鎮座しています。
入口前の酒樽がお出迎え
その1階には和食料理店「
THE WASHIN by 上越やすだ 代々木店 」が入居。
にぎやかで商売っ気の強めな南口側に対して、こちらは地元の人向けという雰囲気
北口から左へ行き、山手通りの下をくぐると、その先にはゆるやかなカーブを描く小道が。こちらにもイタリアンやそば屋など飲食店が並んでおりますが、全体的に南口よりも落ち着いた雰囲気です。
開店記念の花々がキレイ。がんばってください!
このエリアで、ちょうど新規開店したばかりのカフェも発見しました。
こちらの「ジョナスレッグカフェ」は1月11日にオープンしたばかり で、下北沢にある「アートレッグカフェ」の姉妹店とのこと。これからの盛況に期待ですね!
駅西口から山手通りウォーキング
駅西口と八幡橋の間が橋状の通路になっています
駅の西口はこんな雰囲気。
この先を行くと池尻大橋や中目黒の近辺に行きます
西口を出た先には、山手通り陸橋の開けた風景が広がっていました。
東京の地下インフラがどうなっているか、地上からも見られる貴重な場所
この近辺で特徴的なのは、山手通りの中央に建ち並ぶ「塔」。これは通りの地下を走る
首都高速道路・山手トンネルの換気塔。 北方向にあるJR総武線・東中野駅あたりなどにも、同じ換気塔が並んでいます。
こういう階段があるとちょっと登りたくなります
山手通りを北に歩いていくと、途中で大きな鳥居と階段に出くわします。
おごそかな雰囲気の境内(※代々木八幡宮・社務所へ確認を取り、写真使用許諾を得ております)
その先にあるのは「
代々木八幡宮 」。1212年創建の由緒ある神社です。
日本史の教科書などで見たことある形状の竪穴住居(※代々木八幡宮・社務所へ確認を取り、写真使用許諾を得ております)
こちらの境内では1950年の発掘調査で
縄文時代の建物跡(現在は渋谷区指定の史跡) が発見されており、それを復元したものも展示されています。この地域に住む人々と街の歴史は意外と、そしてものすごく長いようです。
個性的な「トイレ」から大使館まで見どころ多め
長い歴史ある神域と隣接するユニークなスポット
代々木八幡宮の鳥居横には、再びユニークな外観の公衆トイレを発見! こちらも「THE TOKYO TOILET」プロジェクトの作品で、題名は「
Three Mushrooms 」とのこと。
こちらの坂道では大型で高級そうな自家用車を多く見かけます
Three Mushrooms近くの交差点で山手通りをまたぎ、小道に入った先は高級住宅街が続いています。
ベトナム旅行へ行ったことがあると「こういうの、向こうで見たことある!」とアハ体験できそうな外観
その中にあるのは「
駐日ベトナム大使館 」。ほかにも
代々木八幡駅の周辺にはブラジル・ブルガリア・ラトビア・ニュージーランド・モンゴル・イラク・コートジボワールなど複数の大使館が! 建築の外観や雰囲気はさまざまで、この大使館巡りだけでも散策を楽しめそうです。
代々木八幡駅は街と区の歴史に触れられる、意外と奥深いエリア
代々木八幡駅周辺の特徴は整った住環境もさることながら、縄文時代から現代までの地域史が地層のように現れていること。代々木八幡宮では縄文〜中世の歴史に触れられ、代々木公園にはどこか戦前期〜高度経済成長期の面影が見られます。山手通りの都営大江戸線換気塔や「THE TOKYO TOILET」からは、21世紀における街と区の変遷が見えるでしょう。
代々木八幡駅&小田急線もあと少しで100周年!
平均家賃の高さはネックと言わざるを得ませんが、それをクリアできる人にとっては、生活面でも歴史・文化面でもとても良い場所と呼べるかもしれません。
この記事の筆者:デヤブロウ プロフィール
都内在住の街歩きライター。Yahooエキスパートとして台東区の地域情報を発信するほか、「macaroni」など複数メディアで執筆を行う。飲食店、博物館、銭湯巡り、寺社探訪を中心に地域情報を発信中。東京シティガイド検定を取得済み。