フランスは「ストライキの国」だと言われています。確かに、政府が何か「改革」をほのめかせば、国内の各地で抗議活動が起こるのが常。エマニュエル・マクロン大統領が推し進めた「年金改革」に対しては、これまで以上に強い反発がフランス国民の間で巻き起こりました。
年金受給の開始年齢が62歳→64歳に
2017年に就任したマクロン大統領は、年金改革を主要な公約の1つとして掲げ、当選を果たしました。その改革案とは、年金受給の開始年齢を、現行の62歳から64歳に引き上げるというもの。退職年齢を2030年までに段階的に引き上げることで、フランスが抱える年金の財政難を救おうとする狙いがあります。フランスの62歳という受給年齢は、欧州連合(EU)諸国の中でも一番低いものでした。ドイツやベルギーでは65歳、イタリアでは67歳と設定されています。かつてはフランスも65歳と設定されていた時代がありましたが、国民と労働組合が結託してそれを引き下げたという「逆改革」の歴史があります。フランスの人々は、不利な状況に対して声を上げることにまったくためらいがないのです。
「デモ」や「スト」にあの手この手
これはリモートワークが定着する前のことです。電車も地下鉄もバスも動きませんから、通勤には徒歩と自転車を活用するしかありません。また、ストライキは公共交通機関だけでなく、教員や一部の公務員にまで広がりました。当然、子どもたちは学校で学ぶこともできません。
さらに、年金改革が決定した2023年には、パリ市内でゴミ回収作業員による抗議ストが起こっています。当時のパリは本当にゴミだらけ。焼却所も閉鎖され、街にはネズミが大量発生するという深刻な問題が起こりました。
迷惑なストライキも受け入れるフランス国民
在住者である筆者が一番驚いたのは、デモやストの規模ではありません。フランス人たちが「彼らにも声を上げる権利がある」と、ストライキを当然のこととして受け入れる姿です。子どもの頃から慣れているとはいえ、不満を口にせず淡々と歩いている彼らを見ると、「フランスはまさに人権の国だ」と改めて感じます。
「お客さまに迷惑がかかる」という日本人の心情とは逆に、「迷惑をかけることで固い意志を示す」フランス人。今回の年金改革は、その決意が過去で最も固かったと言えるでしょう。