すぐ「すみません」と言う日本人、謝らないフランス人。欧米社会の「謝罪しない美学」とは?

日本にあって、フランスにないもの。それは「謝罪」の文化です。欧米の人々があまり謝らないことは広く知られていますが、フランス人も例外ではありません。今回は、フランス流の「謝らない文化」についてご紹介します。

約束の時間に遅れるときや、飲食店で注文ミスがあったとき。日本人であれば、第一声で「すみません」と謝るのが普通です。しかし筆者が暮らすフランスでは、謝罪の言葉を耳にする機会がほとんどありません。

例えば、過去に筆者がフランス人と待ち合わせをした際、相手が30分ほど遅れてきたことがありました。そのとき相手が述べたのは、「どうして遅れてしまったか」という長い説明だけ。謝罪の言葉はありませんでした。

フランス生活に慣れてきたとはいえ、このような場面に遭遇すると、日本との文化の違いを改めて感じてしまいます。

フランス人の謝らないシチュエーション例

パリの公園
逆にフランス人が謝ると驚いてしまう(写真は筆者撮影、以下同)
では、どのようなシチュエーションで謝罪がなかったのか。筆者が実際に体験した出来事をご紹介します。

風邪をうつしたとき

誰かに風邪をうつしてしまっても、フランス人は基本的に謝ることをしません。たとえそれが“クラスターの原因”になったとしてもです。筆者もフランス人から風邪をうつされたことがありますが、「ごめんね」という言葉の代わりに「よく休んで」と言われました。

フランスでは、風邪は自然現象と捉えられることが多いようです。他人を責めるよりも、「自分も風邪を引くリスクを理解している」という暗黙の了解があるのだと感じます。

スーパーで不良品を見つけたとき

スーパーで卵を手に取ったときのこと。確認のためケースを開けてみると(フランスでは紙パックが一般的)、いくつかの卵の殻が割れていました。それを店員さんに伝えたところ、「そのまま置いておいてください」というシンプルな返答が。もちろん、謝罪の言葉はありません。

店員さんとしては、「自分が直接割ったわけではないから、謝る必要はない。自分に非はない」と感じたのでしょう。会社の一員として謝罪することを当然と考える日本人とは、価値観が大きく異なります。

公共交通機関が遅れたとき

日本では、電車や地下鉄が遅延した場合、「ご迷惑をおかけして大変申し訳ございません」という謝罪のアナウンスが流れます。しかし、フランスではこれが一切ありません。遅延の理由が事故であろうとストライキであろうと、公に謝ることをしないのです。

自動改札機や発券機が故障している場合も同様です。こうした状況では、「他の機械を使ってください」や「いつ直るか分かりません」といった対応をされることがほとんどです。フランス人の間では、「自分は直接かかわっていないのだから」という意識が働いているのだと思います。
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謝らない価値観はどこから来るのか
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