発表当時のティザービジュアルや、後述もする原作者の赤坂アカのコメントなどから、配信前には不安の声も聞こえましたが……原作漫画とアニメも楽しんだ上で1〜6話の本編を一気見した筆者が結論から申し上げれば、この実写ドラマ版の出来栄えは大・満・足です!!!
SNSでは「期待値を上回った」高評価に
実際にSNSでは「思ったより悪くない」「いやけっこう良いのでは」「まさかの大成功になるかも」などと、「事前の低かった期待値を上回った」ことが伝わる高評価が相次いでいます。ただ、事前に放送されたアニメ版が最上級の出来栄えであり、熱心なファンの母数がとてつもなく多いため厳しい目になっており、現状ではドラマを1話のみ視聴している人も多い(だから評価はまだ保留)ためか、そこまで絶賛一辺倒というわけでもありません。
それでも、筆者個人は本作を「漫画の実写化」の歴史を更新するほどの傑作だと絶賛します。3つのポイントから、一挙に解説しましょう。
1:齋藤飛鳥は「アイそのもの」だと思わせてくれた
今回の実写ドラマ版『【推しの子】』の最大の評価ポイントは、実力派のキャストのハマりぶりです。何より「星野アイ」役の齋藤飛鳥は、もはやサブスクのはした金ごときで見ていることを申し訳なく思うほど、原作で言うところの「視聴者全員億支払うべき」といった気持ちにさえなるほどでした。 星野アイは劇中で「唯一無二」と語られる存在で、アニメの主題歌『アイドル』でも「一番星の生まれ変わり」「完璧で究極のアイドル」と歌われるほど。今回の「実写」のドラマでは生身の人間が演じて「本当にそこまで思われないといけない」、とてつもなく高いハードルがあります。しかしながら、齋藤飛鳥はルックスもさることながら、冒頭のコンサートの華やかさ、さらにはアイドルと母親という二足のわらじを履き“欲張り”に生きていることも伝わる演技も含め、もう完全に「唯一無二で誰よりも強く輝く一番星の完璧で究極のアイそのもの」だと思わせてくれたのです。
そして、劇中でアイが明るさを見せる反面……いや、その明るさがあるからこそ、そこはかとなく影(陰)を感じさせるところも重要でした。何しろ、アイは表向きには完璧なアイドルですが、だからこそ「うそでできている」自分を半ば冷笑的に捉えており、かつ「人を愛したい」という欲求も持っている人物です。クールな印象がある齋藤飛鳥は、その存在感からしてぴったりだと思いました。
実際に、劇中ではアイが「人を愛した記憶も、愛された記憶もない」ことを明かしながら、「そのうそはいつか本当になるかもしれない」などと返される場面もあります。それは、齋藤飛鳥自身が「アイは自分から最も遠い存在」だと感じて一度はオファーを断るも、「ちゃんと影の部分を持つ齋藤飛鳥なら、アイの影の部分をうそなく演じられると思う」という制作側からの言葉が心に残り、台本と原作を読み込んだ末に出演を決めたという経緯とも、どこかシンクロしているように思えたのです。 そして1話のラストで「ここまでの事態になって、絶対にうそじゃないことを告げる」説得力が半端ではなく、原作とアニメで展開を知っているはずなのに涙ぐんでしまいました。それまでアイドルとして、それもかわいい双子の母親として、明るい振る舞いをしているアイ=齋藤飛鳥の姿を見ていたからこそ、「本当」の気持ちが伝わったのです。