フランスで「高齢化」するワイン人口。「日中いつでも飲んでいる」「若者は飲まない」は本当なのか

フランス人の「ワインに対する思い」は他国に比べ、やはり特別なものがあります。そんな彼らはどんなタイミングで、どんなシチュエーションでワインを楽しんでいるのでしょうか。在住者が詳しくご紹介します。

高齢化するワイン人口。若者のワイン離れも

パリのマルシェ
パリの市場にて
ところが最近では、若者の「ワイン離れ」が進んでいると言われています。フランスの若い世代では、ワインを飲むよりもビールやカクテルといった、カジュアルで飲みやすいアルコールを好む傾向が。また、健康志向の高まりから「お酒自体を飲まない」という人も増えています。

さらに、ワインは「年配向け」「古い」といったイメージが強いのも事実。特にワインの産地やペアリングといった専門知識が多く必要とされるため、若い世代にはハードルが高いと感じられることも多いようです。

確かに、首都パリでは若い人がワインを手に取っている姿をあまり見かけません。近年では「ノンアルコールのカクテル」がブームになっているとも聞きます。

このように、フランスのワインは年配向けの飲み物として変わりつつあります。フランスのワイン業界もこうした状況に対応し、オーガニックワインや手軽に楽しめるスパークリングワインを提供するなど、若者にアピールする試みを進めています。

ワインにまつわる面白い表現

アペリティフ
パリのカフェで必ずあるグラスワイン
とはいえ、フランスがワイン大国であることに変わりはありません。長い歴史を通して、ワインやブドウに関する言い回しもたくさん生まれてきました。ここで一例をご紹介します。

「悪いワインを飲むには人生は短すぎる」

 “La vie est trop courte pour boire du mauvais vin”
「せっかくだから質のいいワインを選んで人生を楽しもう!」という意味のポジティブな表現です。落ち込んでいる人を励ます時にも使われます。

「ブドウ畑と美人は手がかかる」

“Les vignes et les jolies femmes sont difficiles a garder”
フランスではワインと同様、ブドウ畑がとても大切にされています。しかし天候や害虫の被害を受けやすく、なかなか安定しないのがブドウ畑の難しいところ。そのため「やれやれ……」といった意味合いで使われることが多いです。

他にも、服についた赤ワインの染みには「古き良きマルセイユ石けんを使うといいよ!」なんてアドバイスされることがあります。こうしてフランスには、日本語にお米に例えた言葉がたくさんあるように、ワインに関する「言い回し」や「生活の知恵」が多く存在しているのです。

生活に根付くワイン文化

フランスに住むと、ワインが単なるお酒ではなく、日々の食事や人とのコミュニケーションを豊かにする存在であることが分かります。ワインを飲む人が減ったとはいえ、その深い文化と慣習にはいつも驚かされます。

しかし飲む量は、日本に比べれば少ないと言えるかもしれません。食事やおつまみと一緒に、のんびり飲むのが一般的です。というのは、フランス人が「飲酒マナー」に関してとても厳しいため。ゆっくりと焦らず、なるべく酔わない飲み方がいいとされています。

フランス人とワインの関係はイメージ通りなところと、意外なところがあると思います。ただ、ワインを飲まない人でも「誇りに思っている」のは確か。ワインはフランス料理とともに、こちらの文化になくてはならない存在なのです。

この記事の筆者:大内 聖子 プロフィール
フランス在住のライター。日本で約10年間美容業界に携わり、インポートランジェリーブティックのバイヤーへ転身。パリ・コレクションへの出張を繰り返し、2018年5月にフランスへ移住。2019年からはフランス語、英語を生かした取材記事を多く手掛け、「パケトラ」「ELEMINIST」「キレイノート」など複数メディアで執筆を行う。
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