2019年に公開された『ジョーカー』はとてつもなく高い評価を得て、全世界累計の興行収入が10億ドルを超えた大ヒット作でしたが……残念ながら、今回の『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』の評価は賛否両論というよりも「大荒れ」。莫大な製作費に対して現時点での興行成績は厳しく、実際に見ればその理由も納得できてしまったのです。
見る前に知っておくべきこと
見る前に知っておくべきなのは、今作は完全に前作『ジョーカー』の「続き」となる物語で、前作を見ていることが前提の作りであること。前作を見ないまま、本作に挑むことはおすすめしません。また、「簡潔な殺傷・流血の描写がみられる」という理由で日本ではPG12指定となっており、ごくわずかに性的な描写もあるのでご注意を。R15+指定だった前作に比べればショッキングさは控えめですが、完全に大人向けの作品であることは変わっていません。
前作から一転、評価も興行成績も大苦戦に
今作は、アメリカの批評サービスRotten Tomatoesでは批評家からの支持率が33%、オーディエンススコアが32%とかなり厳しいものになりました。日本では1週遅れの公開となったため、「絶賛の嵐だった、あの『ジョーカー』の続編が一転して酷評されている(評価が分かれている)」ことを事前に知り、身構えていた人も多いでしょう。アメリカでは初登場1位を記録したものの、オープニング成績は約3767万ドルで、前作の約9620万ドルの4割に満たない数字となりました。しかも、公開2週目の週末の興行収入はわずか約705万ドルと、前週比はなんとマイナス81.3%。アメコミ映画史上でワースト1位の下降率となってしまったのです。前作の約5500万ドルから約2億ドルにまで増加した製作費の回収は、おそらくはできないでしょう。
日本では作品構造を踏まえて評価する声も
ネガティブな情報が多く拡散され、それがより厳しい興行面に影響している『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』ですが、日本では「評価が分かれている理由は納得できるが、自分は支持をする」という意見のほか、「素直に楽しめた」という声も多く見かけます。事実、映画.comでは5点満点中3.2点、Filmarksでは3.5点(いずれも記事執筆時点)など、レビューサイトではそこまで低いスコアではありません。前作に続き退廃的でリッチな画、主演のホアキン・フェニックスの演技力はもちろん、今回は大スターのレディー・ガガによる見事な歌唱も加わっているため、確実に高く評価できるポイントもあります。何より、後述する通り、毀誉褒貶(きよほうへん)を呼ぶ作品の構造そのもので、「前作の責任を取った」「誠実な続編を作った」作り手の姿勢を汲み取って支持をする人は少なくないのです。
ただ、筆者個人としては、作品の構造や作り手の意図を鑑みても、残念ながら本作をあまり評価できない、というのが正直なところです。もっと言えば、本作は前作の「補習」のような印象があり、それは「多くの人にとっては(少なくとも筆者は)見たくはないもの」と思ってしまったのです。
ここからは内容に踏み込みつつ、個人的に否定的な感想を持った理由を、解説していきましょう。決定的なネタバレには触れないように気を付けたつもりですが、予備知識なしで見たい人はご注意ください。なお、前作の内容にも一部触れています。