4:落ち目の司会者の切羽詰まった状況が見える……「何も起きていない」のに退屈しない理由は?
映画の冒頭で説明されるのは、番組が「崖っぷち」であること。主人公の司会者は、自身の評価が低迷し、番組も視聴率不振のため打ち切りがささやかれ、さらには最愛の妻も肺がんで亡くしているという、なんとも気の毒かつ切羽詰まった状況なのです。そのため、ハロウィンの夜に「悪魔を生出演」させるという、過激な起死回生の手段を選んでしまう理由も理解できる、というわけです。
ちなみに、司会者を演じたのは、『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』で超絶ネガティブ思考の“陰キャ”であるポルカドットマンを演じていたデビッド・ダストマルチャン。直近では『ブギーマン』と『ドラキュラ デメテル号最期の航海』でホラー映画との相性のよさを見せています。
今回は悲壮感や頼りなさが垣間見えるとともに、司会者らしい軽妙さや毅然(きぜん)とした印象を併せ持つ、豊かなキャラクター性と演技にも注目してほしいです。
5:当時の世相、テレビ番組や映画、そして本物の放送事故があったことを反映した内容に
全編にわたる映像面での魅力は、「1977年に実際にビデオテープで録画されたもののように見える」映像でしょう。そのため、「当時のテレビ番組のように映画を撮影」する直球の手法を使ったそうで、常に3台のカメラを回し、照明も当時のランプを用いて、ジャズバンドの演奏も再現するなど、手を抜かずに追求したこだわりがしっかり実を結んだ作品でもあるのです。
さらに、劇中でも説明される通り、1970年代のアメリカはベトナム戦争や石油危機などの社会不安がまん延し、それと呼応するようにオカルトブームが巻き起こっていた時代でした。当時、実際にオカルトホラー映画の代表作『エクソシスト』が大ヒットしており、劇中で少女の「悪魔つき」を描く様は直接的に『エクソシスト』を連想させますし、同時に『キャリー』の影響も強く表れていました。

6:ネタバレ厳禁のクライマックスとラスト、そして実は「映っていたこと」も
本作の大きな見どころは、もちろん何度も言うように「テレビ史上最恐の放送事故」なのですが……実はその「先」にも大きな見せ場があります。具体的にはどう言おうがネタバレになってしまうので秘密にしておきますが、映画館の大スクリーンで映える、衝撃的なクライマックスとラストが待ち受けていることだけは告げておきましょう。
現在はファミリー向けのホラーコメディーにして36年ぶりの続編『ビートルジュース ビートルジュース』や、菅田将暉演じる転売屋が“狩りゲーム”の標的にされる『Cloud クラウド』など、他にも面白いホラー映画が公開されていますが、その中でも『悪魔と夜ふかし』はとびきり奇抜で、挑戦的な試みが見事に成功した作品としておすすめできる内容です。PG12指定ならではの過激さも覚悟しつつ、ぜひ劇場でご覧ください。
この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。