『憐れみの3章』を見る前に知ってほしい8つのこと。R15+の過激描写、R.M.F.とは何か…気になる点を予習
『憐れみの3章』について、その奇妙な特徴と面白さ、見る前に知ってほしいことを解説しましょう。(※サムネイル画像出典: (C) 2024 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.)
3:3話それぞれで「同じ俳優が違うキャラクターを演じている」
本作の最大の特徴と言っていいのは、
3つの章に同じメインキャストたちが登場し、それぞれの章で別のキャラクターを演じていること。それぞれの章の終わりで短いクレジットが出てからは、「俳優は同じでも、ここからは違う話で、全く異なるキャラクターになっているんだな」と切り替えて考えたほうがいいでしょう。
それぞれのエピソードには全く接点がない……はずなのですが、後述する通り、
3つの独立した物語の根底には共通する「構造」があることが分かるでしょう。部分的にリンクしている要素も多くあり、それをもって「続けて見るからこそ感じ取れるものがある」のも、本作の醍醐味(だいごみ)です。
さらに、エマ・ストーン、ジェシー・プレモンス、ウィレム・デフォーなどの俳優それぞれの存在感と演技力をもって、「同じ人のはずなのに別の人にも見えるし、同じ要素も感じられる」ことも、間違いなく奇妙な味わいに直結しています。
4:1話目は「上司に全てを支配される男」の話
ここからは各章のあらすじを簡単に紹介しましょう。
公式のプロダクションによれば、第1話は「選択肢を奪われ、自分の人生を取り戻そうと格闘する男」の話。主に描かれるのは「上司が部下の行動どころか、食生活や妻との性生活までをも把握していて、その部下も上司の指示に全て従っている」という、
ゆがんでいるにも程がある主従関係です。
主人公の部下は、そんな上司からのとんでもない「命令」を聞いて、「さすがにそんなことはできない」と拒否をするのですが、おかげで信頼を失い、結果として「暴走」をしてしまいます。3話それぞれが「悪い冗談」のようなブラックコメディー色が強いのですが、本作は特に「笑うに笑えない状況」が続く、1話目にふさわしい分かりやすさがある、いい意味でのイジワルさに満ちた内容と言っていいでしょう。
5:2話目は「別人のような妻に疑惑を抱く男」の話
2話目は「海で失踪し帰還するも別人のようになった妻を恐れる警官」の話。海洋調査に出た妻が行方不明となり、精神的なダメージを負い同僚からも心配されていた主人公の元に、妻が発見されたという知らせが届きます。妻は衰弱していたものの命に別状はなく、平穏な日常が戻ってくると思いきや……主人公は彼女の「お気に入りの靴のサイズが合わない」「以前は嫌いだったチョコレートケーキを一気に食べてしまう」といった言動や行動に違和感を覚えるようになってしまいます。
主人公は客観的には被害妄想に取りつかれている、ただ仕事をするのも危険なほどに精神的な病を患っているように見えます。一方、妻はまともで、彼に存在そのものを否定される様がかわいそうで仕方がないのですが……真の恐怖は、その後の主人公による「とんでもない注文」にあります。その注文を受けて妻がどのような行動をしてしまうのか……見る人によって解釈が異なるであろう、衝撃的なラストまで、ぜひ見届けてほしいです。
6:3話目は「ムチャすぎる条件の教祖を見つけようとする話」
3話目は「卓越した教祖になると定められた特別な人物を懸命に探す女性」の話。冒頭から「死体安置所で、女性を死体に触らせて、よみがえらせる能力があるかを確かめる」シーンがあり、その後は主人公の女性は、怪しいカルト宗教の一員であり、それほどの能力を持つ人物を探す旅をしているのだと分かります。
教祖の資格として求められるのは「双子の女性の1人で、かつもう1人が亡くなっている」という条件かつ「死者をよみがえらせる能力」。3話の中では最も難解にも思える内容ですが、「ムチャにもほどがある使命が主人公に与えられている」ことを前提にすれば、筋を追いやすいでしょう。そんな気の毒な彼女が、いつしか狂気に取りつかれ、物語がやはりブラックコメディー的に、いやホラー的とすら言える、予想外すぎる事態に発展する様にも期待してほしいです。