アカデミー賞受賞作からわずか8カ月後の最新作
ランティモス監督の作家性は(具体的には後述もしますが)かなり強烈で、それぞれの作品が「決して忘れられない」ほどのインパクトがあります。『哀れなるものたち』が日本で公開されたのは2024年1月26日。それからわずか8カ月後に、ランティモス監督およびエマ・ストーン出演の最新作が公開されるという事実から、もうクラクラしてしまいそうです。【関連記事】『哀れなるものたち』の18禁指定に納得の理由。『タイタニック』『バービー』も連想する作品の意義とは
今回の『憐れみの3章』もランティモス監督作の例に漏れず、かなり奇妙な作品で、後述する通りR15+指定納得の過激な描写もあるため、ある程度は見る人を選ぶでしょう。しかし、「選ばれた」人にとっては大いにハマって、「この映画のことばかり考えてしまう」ほどの奥深さや中毒性を感じ取れるでしょうし、それでいて一定のエンタメ性もあるため、見れば高確率で面白く感じられる内容だとも信じていています。
ここでは、大きなネタバレにならない範囲で、事前に知っておいてほしい情報をまとめましょう。予備知識ゼロで見ても「なんなんだこの映画は?」という困惑も含めて楽しめるかもしれませんが、本作の特徴からすれば「こういう作品なんだな」と身構えておいたほうがベターであり、それでこそ混乱することなく堪能できる内容とも思えるのです。
1:上映時間は2時間45分
本作の上映時間は2時間45分(165分)で、ランティモス監督作の中で最も長尺の映画となりました。そのため事前のトイレは必須です。とはいえ、長さにおののく必要はそれほどありません。後述するように3話のオムニバス構成であり、それぞれのエピソードにメリハリもあるためか、少なくとも筆者個人は「えっ!? もう終わり?」と思うほどに短く感じられたのですから。
2:R15+指定も納得の過激な描写
本作は「強い性愛描写および肉体損壊の描写が見られる」ためにR15+指定がされています。R18+指定になるほどではないとはいえ、エロもグロも両方あるのです。そのR15+指定の描写が特に目立つのは第2章。劇中で流れる性行為のビデオ映像と、その後の「痛そう」なシーンは、それぞれ短いもののショッキングであり、直接的に描く意義もあると思えました。それなりの覚悟をして見ることをおすすめします。