「妊娠しないための知識」しか教わっていない私たちが知っておくべき、不妊治療現場のリアル

不妊治療に保険が適用されるようになって約2年。不妊治療の当事者であるライターと現役の胚培養士が、不妊治療の現実や若い人に知っていてほしいことを話してみました。

「いつかは子どもがほしい」と思う人へ

若い人にこそ知ってもらいたい不妊治療現場のリアル
若い人にこそ知ってもらいたい不妊治療現場のリアル
今、仕事にまい進している若い世代の女性の中には「いつかは子どもがほしい」と思っている人もいるのではないでしょうか。以前、タレントの指原莉乃さんが卵子凍結をしたことが話題になりましたが、今は子どもを産む予定はないけれど、いつか子どもを持ちたくなったときのために……と卵子凍結をする人も増えているといいます。
 
人工授精や体外受精といった不妊治療に保険が適用されるようになって約2年。不妊治療のハードルが少し下がったと思う人もいるかもしれません。
 
確かに、高額な治療が3割負担で受けられるようになったことで、救われたカップルも数多くいるでしょう。筆者も保険適用になったおかげで、現在体外受精に挑戦することができています。
 
しかし、不妊治療は「すれば授かる希望に満ちたハッピーな治療」というわけではないことも、身をもって実感しています。そして、不妊治療を続ける中で、もっと若い頃……10代、20代の頃に知っておきたかったことがたくさんあったことに気付きました。
 
そこで今回、精子と卵子を受精させる専門職「胚培養士」としてクリニックで働く傍ら、SNSで不妊治療の最新情報を発信するぶらす室長と、いつか子どもを持ちたくなるかもしれない人に知っておいてほしいことをお話ししてみました。

「努力が報われない」経験をしたことはありますか?

突然ですが、皆さんは「努力が報われない」経験をしたことはありますか? 部活で頑張ったけれど負けてしまったとか、集中して勉強したけれど志望校に落ちてしまったという過去をお持ちの人もいるかもしれません。
 
ですが、若い頃は比較的、「勉強も仕事も、頑張った分だけ結果が得られる」という経験を得やすいのではないかと筆者は思います。仕事だって、うまくいかないことももちろんありますが、頑張れば何かしら得られるものがあったように思います。
 
しかし、不妊治療に取り組んでみて約1年。「努力が報われない」「理不尽だ」と思うことばかりだとつくづく感じます。
 
実際に不妊治療を始めると、決まった時間に服薬したり、自分で自分に注射を打ったりしなければならず、時には仕事やプライベートを犠牲にして治療することもあります。

筆者は幸い理解ある会社に勤めていて両立できていますが、体の都合(生理や排卵のタイミングなど)で「明日突然休んで病院に行く」なんてことも珍しくありません。そうしたことから、中には治療との両立が難しく仕事を辞める人もいます。
 
筆者自身、友人との約束を早めに切り上げて夜の分の自己注射を打ちに帰ったり、決まった時間までに帰れない日は会社に薬を持って行って、会社のトイレで膣錠を入れたりしたことも何度もありました。

しかし、どんなに医師の指導を守っても痛い注射に耐えても、必ず結果が出るとは限らないのが不妊治療です。
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結果は出ないけど諦めることもできない
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