世界最大の経済大国であるアメリカの大統領選は4年に1度行われるビッグイベントで、その結果が世界の行方を左右するほど大きな影響力を持っている。
そんな大統領選挙だが、2024年はこれまでの選挙の中でも特に波乱の展開になっている。というのも、東部ペンシルベニア州で7月13日に、共和党の候補者のドナルド・トランプ前大統領が演説中に狙撃されて暗殺されかける事件が発生したのである。耳を撃たれたが、幸い命に別状はなかった。
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「もしトラ」が「確トラ」に
ただ中継されていた演説中に暗殺未遂に巻き込まれて間一髪で生き延びたトランプ氏は、支持者などの間で「神が味方についた」と神格化され、大統領選でも勝利は間違いないと見る人たちが多くなった。メディアや専門家はこれまで、「もしトランプが再選するとすれば……」という場合について「もしトラ」と呼んでいたのが、暗殺未遂事件以降は「確実にトランプが再選する」という「確トラ」と言われるようになってきている。さらに7月21日には、81歳のジョー・バイデン大統領が体力などの問題で大統領選から撤退を発表した。代わりにカマラ・ハリス副大統領が、バイデン氏に代わって民主党の候補者になる可能性が高くなった。8月19日からの民主党全国大会で正式指名される予定だが、ますます「確トラ」になったという声も聞こえてくる。
では本当に「確トラ」が起きるとすると、世界または日本にどんな影響を与えるのだろうか——。今回はトランプが大統領に復帰した場合に何が起きると考えられるのかを見ていきたい。
アメリカの大統領選を簡単におさらい
本題に入る前に、まずアメリカの大統領選を簡単におさらいしたい。アメリカ政治は2大政党制で、伝統的な価値観を重要視する保守派である共和党と、人権や福祉を重視するリベラル派である民主党が、それぞれ大統領選挙に出馬する候補者を1人ずつ選ぶ。そして11月の第1月曜日の翌日に、両党の候補のうち1人を選ぶ大統領選挙を実施するのである。2024年は、11月5日の火曜日に投開票が行われる。そこでトランプ元大統領が間違いなく勝利するというのが「確トラ」を主張する人たちの見方だ。アメリカでは多くの企業が大統領選までにさまざまな世論調査を行うが、現時点ではトランプ氏と、ハリス氏の差が拮抗(きっこう)しているという結果もある。メディアでそうした世論調査が次々と報じられるので何が「実態」なのかは分かりにくい。
最近では、こうした調査に加えて、賭博などの予測マーケットと呼ばれる分野が注目されていて、カネをかけて勝敗を予測する人たちの声を集めた結果である「オッズ」の予測がより正確であるとの見方もある。それを見ていると現時点では「確トラ」が優勢という結果になっている。