ヒナタカの雑食系映画論 第103回

永瀬廉主演の『よめぼく』も話題。もう“お涙ちょうだい”なんて言わせない「余命宣告」映画の誠実さ

Netflixで配信中の『余命一年の僕が、余命半年の君と出会った話。』と、劇場公開中の『ディア・ファミリー』、どちらも「余命宣告もの」映画ですが、決して「泣かせる」ことが主題ではない、優秀な映画である理由を解説しましょう。(サムネイル画像出典:Netflix)

余命宣告ものではない、現在公開中のアニメ映画との共通点も

この『よめぼく』と『ディア・ファミリー』を見て、「余命宣告ものというジャンルで呼ぶと、作品の主題を矮小(わいしょう)化させてしまうのかもしれない」と反省したところもあります。

何しろ、どちらもが「他の価値観を知る」物語でもあり、さらには「夢に向かって努力した先」も描いているからです。それもまた余命宣告をされた人に限っていない、多くの人が経験する事柄でしょう。しかも、実際に余命宣告ものではない、現在公開中のアニメ映画『数分間のエールを』『トラペジウム』『ルックバック』でも、それらは一致しているのです。
 

特に、『ディア・ファミリー』と『トラペジウム』は「無謀にも思える目標に周りを巻き込む」話の骨格が似ており、主人公が絶望した後に投げかけられる「質問」が、両者でほぼ一致していたことにも驚きました。(余談ですが、『トラペジウム』は熱狂的な支持を得て多数のリピーターを生んでおり、公開から2カ月近く経った今なお上映中で、7月4日から公開される劇場もあります)
 

他にも、2024年5月より公開されたロリータファッションの(それに限らない)趣味への優しい視点もある『ハピネス』、2021年公開の『余命10年』も実話をベースにきれい事や安易な解決に頼らず、不治の病への葛藤も誠実に描かれた秀作でした。
 

やはり、余命宣告ものという単純なジャンル分けだけでは決して収まらない、これらの映画の魅力を実際に見て知ってほしいです。涙を流す、作品として楽しむ目的以外でも、現実で前向きに生きるためのヒントも得られるかもしれませんよ。

この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
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