“休憩時間のない”教育現場。給食指導の「輪番制」で負担は減らせるのか? 教員目線のホンネ

教員の働く環境を改善するために、給食指導の「輪番制」を推奨する動きがある。大阪府内の小学校に勤める白石先生(仮名)に、教員目線のホンネを聞いた。

精神疾患による休職者が過去最多。教員の「休憩時間」はどう確保する?

教員
休憩時間のない教育現場
6539人――。

教職員全体の0.71%に当たるこの数は、全国の公立学校に勤める教職員のなかの精神疾患による休職者の数を表している。文部科学省が2022年度に公表した調査結果によると、その数は過去最多となった(*1)。また1日当たりの教員の平均労働時間は、減少はしているものの、依然として10時間を超えているのが現状だ(*2)。

そんななか教員の働く環境を改善するために、中央教育審議会は「休憩時間」を確保する取り組みを推奨した。授業を担当していない時間に休憩を割り振ったり、担任以外の教員も含めて給食指導を「輪番制」で行うなど、教員の健康維持を目的とした内容となっている(*3)。

一般的な会社員にとって昼食は休憩時間となるものの、教員にとっては児童への“給食指導の場”でもある。輪番制は、はたして教員の負担を減らす取り組みとなるのだろうか。

大阪府の公立小学校で1年生の担任を務める白石先生(仮名)に、休憩時間の現状と給食指導の輪番制に対するホンネを聞いた。

給食指導を統一しづらい輪番制への懸念

「輪番制の導入は、難しいと思いますよ」

開口一番にそう話す白石先生。輪番制によって休憩時間を確保する取り組みは、教員の負担を減らすためには効果的な印象を受けるが、実際はそう単純なものではないらしい。

「輪番制にするのであれば、ちゃんとした打ち合わせが必要です。日によって担当する先生が代わることで、給食の指導方針がばらばらになったら子どもたちは混乱してしまいます。そうならないために教員間でルールを統一しておく必要があります」

給食指導は“学級経営のひとつ”であるという捉え方も根強く、他の教員に任せることへの抵抗感を強めているという。

「良いか悪いかは置いておいて、担任は、その日のクラス全体の状態を考慮しながら給食時間をどのように過ごすかを考えているので、そこだけを切り離して他の先生にお任せするというのはやりづらいですね。恐らく、そういう先生は多いのではないでしょうか」

休憩時間のために業務が増える!?

給食指導において求められるのは、当然ながら児童の見守りだけではない。

文部科学省が発行する『食に関する指導の手引』によると、「食事にふさわしい環境を整え、ゆとりある落ち着いた雰囲気で食事ができるよう、日頃から児童生徒が安心して食べられる食事環境作りに心がけること」であり、「食物アレルギーを有する児童生徒への誤配食等が起こらないよう、校内において作成したマニュアル等に沿って適切に対応すること」が担任には求められている(*4)。

輪番制となると、それらの役割を他の教員が担うこととなる。ルールの統一だけではなく、その日の児童の状態を共有するための打ち合わせも必要だろう。休憩時間を確保すために、追加で業務が増えるであろうことが想像できる。

さらに、担任以外の先生が給食指導を担当した場合の懸念をこう続ける。

「家に帰ってから子どもが『〇〇先生のときにこういうふうにされて嫌だった』という話を保護者にした場合、その連絡を受けるのは担任なんです。そのため輪番制の導入にはあまり前向きになれません」

常に求められる児童への対応。休憩時間を確保する難しさ

とはいえ休憩時間がないことは、教員にとって大きな負担となる。給食時間に休みたい気持ちはないのだろうか。

「仮に勤務時間中に休憩時間を割り当てられたとしても、先生が完全に休める状態にはならないだろうと思います。給食指導を他の先生にお任せできても、仕事をする場所である職員室で過ごすことになるので休んだ気にはならないでしょう。担任している教室で子どもたちと一緒に食べた方が気持ちが休まることだって考えられます」

学校内に教職員専用の休憩室などがあれば落ち着いて休むことができるが、校内にそのような場所が確保されている学校はほとんどないだろう。職員室に児童が尋ねてくることもある。休憩時間だからといってその対応をしないことは当然できない。

単純に休憩時間を割り振るだけでは、教員の負担が減るわけではない現状が見えてきた。しかし給食時間の輪番制が最適な取り組みではなかったとしても、教員の負担を減らしていくことは、児童が質の高い教育を受けることにもつながっていく。

教員の働く環境を改善していく取り組みは、今後も求められるだろう。
 
この記事の執筆者:建石 尚子
大学卒業後、5年間中高一貫校の教員を務める。フィンランドにて3ヶ月間のインターンを経験したのち、株式会社LITALICOに入社。発達に遅れや偏りのある子どもやご家族の支援に携わる。2021年1月に独立。インタビューライターとして、教育や福祉業界を中心にWEBメディアや雑誌の記事作成を担当。
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