ヒナタカの雑食系映画論 第97回

『マッドマックス:フュリオサ』の8つの魅力。前作とは異なる評価軸、強化されたフェミニズムの精神とは

『マッドマックス:フュリオサ』 の8つの魅力を解説しましょう。「スピンオフ作品としてこれ以上のものは考えられない」理由ばかりなのです。(※サムネイル画像出典:(C) 2024 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved. )

7:合わせて見てほしいジョージ・ミラー監督作は?

最初に掲げた通り、今回の『フュリオサ』は予備知識がなくても楽しめますが、もちろん他の『マッドマックス』シリーズを合わせて見れば、その一貫した作品の精神性やキャラクターの関係性のさらなる深掘りもできるでしょう。

個人的に本作と合わせて見てほしいのは、日本では2023年に公開された、同じくジョージ・ミラー監督作の『アラビアンナイト 三千年の願い』です。
 
こちらは、幽閉されていた魔人が、「1人で生きていた」現代の女性の学者に3000年にわたる物語を聞かせるという内容。今回の『フュリオサ』と同様に、ジョージ・ミラー監督らしいフェミニズム精神と、「孤独」にも優しく寄り添う優しい作家性が、最もダイレクトに表れた作品だと思えるのです。

8:スピンオフ作品として「理想的」「最適解」な内容に

総じて、今回の『フュリオサ』はスピンオフ作品としては「理想的」「最適解」な内容に仕上がったとも思えます。

何しろ、前作はとんでもない世界観およびアクションが構築された、映画史を更新するほどの革命的な1本。その新鮮な驚きはどうしても減ってしまう中でも、前作に引けを取らないアクションを見せ、さらにフュリオサというキャラクターを深掘りして、映画を見終われば『フュリオサ』のストーリー上の“続編”である前作『怒りのデス・ロード』をすぐにでも見たくなるという……重ね重ね、「これ以上のものは考えられない」とさえ思える内容なのです。
フュリオサ
(C) 2024 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.
また、ジョージ・ミラー監督によると​​、今回の『フュリオサ』の物語は、『怒りのデス・ロード』の時にすでに作られていたそうです。俳優、デザイナー、そして全てのスタッフは、その物語を脚本として受け取っており、フュリオサを演じたシャーリーズ・セロンも役作りの参考にしていたのだとか。

今回の『フュリオサ』の全編にある圧倒的な「説得力」は、世界観の構築やアニャ・テイラー=ジョイを筆頭とする俳優の熱演はもちろん、「『怒りのデス・ロード』の時にすでに考えていた物語」という「土台」があってこそなのでしょう。それでこそ、見た人がさらに『マッドマックス』シリーズにハマることも、また期待しています。

この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
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