昨日、子供(小6)が学校から帰ってきて、今日はクラスの女子が憤っていた、と報告。内科検診で聴診器を当てるのに、全員、上半身を脱がせたから。泣いた子もいるらしい。
多くの保護者の関心を集め、投稿から10日たった2024年5月31日現在、このポストについた「いいね」数は4.2万(!)にものぼります。
その後PTAからも申し入れがあり学校側が謝罪したようですが、最初のポストを見たときは、筆者も「まだ、こういうことがあるのか」とがっかりしてしまいました。2024年1月、文部科学省は健康診断の際に子どものプライバシーに配慮するよう求める通知を出したのですが、すぐには変わらない現場も多いのでしょうか。
ただし、子どもからこういった話を聞いたときにスルーせず、問題視する保護者が増えてきたのはよいことと感じます。「保護者」とは子どもの権利を保護するもの。子どもが「いやだ」と思っても声をあげられないときや、声をあげても大人に聞いてもらえないとき、代わりに声をあげるのはまさに保護者の役目でしょう。
保護者と医師、なぜ話がかみ合わないのか?
実際に学校健診を引き受けたことがある医師たちの声も、目を引きました。「衣類の上からでは心音がよく聞こえないので脱衣は必要」「こんなことを言われて心外」などの声は多く、なかには「もう引き受けない」「学校健診は廃止すべき」という人も。
えっ、なんでこんなに話がかみ合わないの!? ちょっとショックでした。もしかしたら、その後この父親が何か不適切な発言でもしたのかな? と思いポストをたどってみましたが、そんなことはなさそうです。
1月に文科省が出した通知も確認しましたが、やはり「脱衣」を想定した文言は見当たりません。脱衣禁止、と書いてあるわけではないですが、あくまで着衣を原則としています。大人を診察するときと同様に、服の裾から手を入れるか服をまくるかすれば、聴診器を直接肌につけて心音を聴けますから、着衣でも問題ないわけです。
2.検査・診察時の服装について
検査・診察時の服装については、正確な検査・診察に支障のない範囲で、原則、体操服や下着等の着衣、又はタオル等により身体を覆い、児童生徒等のプライバシーや心情に配慮する。
また、検査・診察の場面においては、正確な検査・診察のため、必要に応じて、医師が、体操服・下着やタオル等をめくって視触診したり、体操服・下着やタオル等の下から聴診器を入れたりする場合があることについて、児童生徒等や保護者に対して事前に説明を行う。
(「児童生徒等のプライバシーや心情に配慮した健康診断実施のための環境整備の考え方について」より)
※脊柱側弯症の検診も、京都市のように前掛けタイプの布を使用するなど、子どものプライバシーと両立可能な方法は、ちゃんと探せばいろいろとありそうです。(※2024年6月3日追記)
「タダ働き同然で引き受けてきたのに」医師たちが憤るわけ
どうして、こんな騒ぎになったのか――。いろいろ考えられますが、1つの大きな要因として、健診を行う医師たちの「タダ働き同然の低い報酬で引き受けてきたのに」という、鬱積(うっせき)した不満があったように感じます。見落としがないように気を張るため、健診は普段の診療よりもむしろ神経を使う。しかも大勢を一度に診なければいけない。なのに報酬は安く、自分の診察時間も削らなければならない。そこへきて、自分たちが子どもをエロい目で見ていると思われるなんてあんまりだ……。医師たちの投稿を読むと、確かにそれは大変だし気の毒だなと感じます。
でも、健診する対象が大人だったら着衣なのに、なぜ学校健診は脱衣させてよいと言えてしまうのでしょう。子どもは文句を言わない(言えない)から、というのもあるかもしれませんが、おそらく最大の理由は「タダ同然にやってあげているんだから、それくらい我慢すべし(大人が我慢させるべし)」という思いがあったからでは。
安い仕事だから少しでも早く終わらせたい。でも見落としも避けたい。効率をあげるため、服は脱ぐべし。子どもには「恥ずかしがるのが間違いだ」と説明すべし、と考えてしまうのではないでしょうか(大人にはそんなこと言わないでしょう)。
こういった思考は、PTAでもよく見られます。人はいやいや何かをやっていると、ほかの人にも無理やり何かをさせがちです。「自分も我慢してやっているんだから、おまえも我慢するのは当然」と思うようになり、相手の意思を無視して強制してしまうのです。PTAに限らず、無償(に近い)労働、奉仕についてまわる問題かもしれません。