「こんなことを言ったら叱られるかもしれませんが」 ミン・ヒジン VS HYBEを見て20代編集者が思うこと

K-POP業界は今、大きく揺らいでいる。大手事務所HYBEと傘下レーベルADORの代表で、NewJeansのプロデューサーであるミン・ヒジンさんが背任問題を巡り大バトル中だ。アーティストやファン、法廷を巻き込んだ泥沼の争いを整理する。※サムネイル写真:YONHAP NEWS/アフロ

M世代の韓国エンタメウォッチャー・K-POPゆりこと、K-POPファンのZ世代編集者が韓国のアイドル事情や気になったニュースについてゆるっと本音で語る【K-POPゆりこの沼る韓国エンタメトーク】。韓国エンタメ初心者からベテランまで、これを読めば韓国エンタメに“沼る”こと間違いなし!
K-POPゆりことZ世代編集者がゆるっとトーク
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#36のテーマは、韓国国内はもちろん、日本や海外のメディアをも揺るがしている「HYBEグループの内紛問題」について。

HYBEの経営陣と傘下レーベルADOR代表でNewJeansのプロデューサーとして知られるミン・ヒジンさんが背任問題を巡り、アーティストやファン、法廷を巻き込んで大バトル中。複雑かつ、まだ行く末の見えないこの事件について、現時点でのまとめと背景についてお話しします。

【前回の記事「相次ぐK-POPアイドルの『事務所独立』 背景にある“アーティスト側の事情”」(#35)はこちら

K-POP業界が今、大きく揺らいでいる 

ADOR代表でNewJeansのプロデューサー、ミン・ヒジンさんは4月25日に緊急記者会見を行った ※写真:YONHAP NEWS/アフロ
ADOR代表でNewJeansのプロデューサー、ミン・ヒジンさんは4月25日に緊急記者会見を行った ※写真:YONHAP NEWS/アフロ

編集担当・矢野(以下、矢野):K-POP業界を揺るがす事件が起きてしまいました。現在進行形で続いているHYBEとミン・ヒジンさんの争いについてお話ししたいです。
 
K-POPゆりこ(以下、ゆりこ):論点が多く、10人いれば10人なりの見方が出てくるような状態で、全く先が予想できません。もう少し状況が見えて落ち着いてからお話ししようかとも考えたのですが……。
 
矢野:日本でも報道されていますし、多くの記事が出ています。なのに、なぜかイマイチ全体像がつかめずモヤっとする部分があるんです。なので、“現時点での整理”をやっておきたいなと思いました。個人的にはSMエンターテインメント(以下、SM)のお家騒動のほうが分かりやすかったんですよ。
 
ゆりこ:(SMの場合は)登場人物や関わる企業は多かったものの、結局のところ「次の経営者(大株主)は誰になるのか?」という着地点が明確でした。でも今回は、単なる社内のもめ事だったはずが、かなり広範囲に延焼しています。そしてK-POP業界全体にも関わる解決すべき問題も提起されている。

「HYBE VS ADOR代表 ミン・ヒジン」これまでの流れ
4月22日:韓国メディアがADOR代表ミン・ヒジンさんの「背任疑惑」を報道。

4月25日:HYBEがミン・ヒジンさんを「背任容疑」で告発すると発表(※告発は翌日)。同日の夕方にミン・ヒジンさんが弁護士と共に緊急記者会見。

5月7日:ミン・ヒジンさんがHYBEを相手に議決権行使を禁止する仮処分を申請(※一方的な解任を防ぐため)。

5月17日:7日に申請された「議決権行使禁止仮処分」に関する結論が出ると言われていたものの先送りに。裁判所は両者へ追加の資料提出を求める。

5月18日:NewJeansメンバーが裁判所に「嘆願書」を提出したことを発表(提出は前日17日、詳細な内容は非公開)。

5月19日:NewJeansメンバーの親たちがエンターテインメント業界の問題に強い専任弁護士を選任したと報道(実際に選任したのは14日)。

5月22日:「コピー疑惑」を指摘されたグループが所属するHYBE傘下レーベルBELIFT LABがミン・ヒジンさんを「名誉毀損(きそん)」で告訴。

矢野:まずはHYBE側が「ミン・ヒジンさんが独立を仕組んでいる、背任行為だ」と訴えたのが発端ですね。
 
ゆりこ:はい。第1の争点は「ミン・ヒジンさんが背任行為を働いたのかどうか」です。ここについてはすでに告訴されている状態なので、司法の判断に任せるほかありません。現在、ミン・ヒジンさんとADORの役員が持つ株は合わせて20%。本当に“乗っ取る”ためには、株の過半数を手に入れなければいけません。しかし、実は残る80%の株の持ち主は……HYBEなんです。

矢野:えっ? ではHYBEが彼女に株を売らない限り、ADORを独立させることは無理なのでは?
 
ゆりこ:そうなります。そんな状況で「独立を図る」というのは、一体……という純粋な疑問が出てきます。HYBEはADORに社内監査を入れた結果、「脱・HYBE」を計画していた証拠資料が見つかったとしていますが、ミン・ヒジンさんは会見で「個人的に書き記したメモレベルの内容」と否定していました。
 
矢野:どこまでが法的に認められる“証拠”と言えるのか、ですよね。そして最新の報道ではミン・ヒジンさんが韓国のインターネット企業・NAVERなどに買収の相談をしていたとか何とか……。
 
ゆりこ:はい。HYBE側から、ミン・ヒジンさん側が他社へADORの買収を持ちかけていたのでは?という情報が出てきました。これまでは「現状のままでは背任での立件は難しい」と言われていましたが、少し風向きに変化があったようです。そこへ加えてNewJeansメンバーや親たちも出てきました。ミン・ヒジンさんを擁護すべく、弁護士をつけて嘆願書を裁判所に提出。さらにはミン・ヒジンさんが記者会見で「NewJeansのコピーだ」と指摘したグループのレーベルが名誉毀損で彼女を訴えまして……。

矢野:登場人物がどんどん増えている。メンバーやその親御さん、他レーベルまで出てきて、事態はさらに複雑化していますね。

ゆりこ:そうなんです。今回はいったんパクリ問題については置いておくとして。いずれにしてもNewJeansの今後を大きく動かすのは、ミン・ヒジンさんがHYBEを相手取って起こした「議決権行使禁止仮処分申請」が通るかどうか。今月末までに裁判所のジャッジが下る予定です。却下されればおそらく解任は免れず、通ればHYBEはミン・ヒジンさんを簡単に解雇できなくなります。

矢野:本当にドロドロですね。ただ1番腑に落ちないのは、NewJeansを世界的人気グループに育て、HYBEグループに利益をもたらした貢献者を、なぜそこまでして血祭りに上げたのかという点です。アーティストにも悪影響を与えますし、実際に複数のグループにも飛び火しているじゃないですか。
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「こんなことを言ったら叱られるかもしれませんが……」
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