なぜ世界の人口が多すぎると考える人の傾向が強いのか。同基金によれば、その理由は、政治家や評論家、学者の一部が、人口が多いことによって需要過多になって供給不足の状況になるため、それが不安定な経済や気候変動、資源争奪争いの原因になっていると主張しているからだ。
子どもを「減らそう」としてきた中国の歴史を振り返る
ただ同基金はそれに疑問を呈し、「問うべきは、望む数の子どもを希望する間隔で産むことができるという基本的人権を、すべての人が行使できているかどうかです」と主張している。この子どもを産むことが基本的人権だという考え方は興味深い。しかし世界には、この権利を真っ向から制限してきた国がある。そう、学校の教科書などでも習った「一人っ子政策」を取り入れてきた中国である。
少子化が問題になっている日本も、最近、子育て支援金の徴収額が上がることで大きな話題になっているが、これはそもそも子どもを増やすための政策である。これとは逆に、子どもを減らそうとしてきた中国は、いったい当初何を考えていて、その結果どうなったのか。今回は、この一人っ子政策について掘り下げてみたいと思う。
一人っ子政策を守る夫婦には「奨励金」「医療費支給」
この制度をひも解くには、中国の歴史を少しさかのぼる必要がある。現在の中華人民共和国が建設されたのは1949年のことだ。中国共産党の毛沢東主席が、北京市にある天安門広場で建国を宣言したのはよく知られている。もともと過去の戦争などで人口がそれほど増加することがなかった中国は、1949年の建国以降は、国民が多くなればそれだけ国家を成長させるという考え方の下、人口増加を歓迎していた。ところが1953年に初めて人口調査が行われると、人口が予想された数を1億人も超えていることが判明した。
食糧不足が懸念されていた当時、人口が増えることで国が行き詰まると考えた中国政府は、計画的に出産をするよう国民に指導を始めた。要は、たくさん子どもを産まないよう仕向ける政策に動いたのである。だがそれでも人口は増え続け、1979年に「一人っ子政策」に乗り出した。
「一人っ子政策」では、「1組の夫婦に子どもは1人だけ」とされ、2人以上の出産を厳しく規制するようになった。晩婚を奨励したり、一人っ子政策を守る夫婦に奨励金を払ったり、医療費が支給されたり、就職が有利になったりするなどの優遇措置もあった。