松本人志、もし敗訴したら過去出演作はどうなる? そもそも「降板」「お蔵入り」に法的義務はあるのか

ダウンタウン・松本人志さんが『週刊文春』の発行元である文藝春秋と同誌編集長を被告として起こした5億5000万円の損害賠償請求等訴訟が始まった。仮に松本さんが敗訴した場合、どのようなことが起こるのだろうか。弁護士に聞いた。(サムネイル画像出典:アフロ)

松本人志さん
松本人志さん(画像出典:アフロ)
2023年末、『週刊文春』(文藝春秋)に性行為強要疑惑を報じられたダウンタウン・松本人志さんが『週刊文春』の発行元である文藝春秋と同誌編集長を被告として起こした5億5000万円の損害賠償請求等訴訟における第1回口頭弁論が、2024年3月28日に東京地方裁判所で行われた。
 
この裁判の行方に注目が集まる中、SNS上では、松本さんが敗訴した場合の芸能活動について「裁判で負けたら、2度とテレビでまっちゃんを見られなくなるのか?」「敗訴したら復帰は厳しい?」といった声が上がっている。

スキャンダル報道による自粛や降板の法的義務は?

松本さんは1月、「様々な記事と対峙(たいじ)して、裁判に注力したい」との理由で、当面の間は芸能活動を休止することを所属事務所・吉本興業の公式Webサイト上で発表。また、自身のX(旧Twitter)でも「事実無根なので闘いまーす」と投稿し、裁判に対する意気込みを表明していた。
 
そもそも、スキャンダル報道による自粛や降板に法的な義務はあるのだろうか。エンターテインメント法務に詳しい尾崎聖弥弁護士に聞いてみた。
 
尾崎弁護士「司法機関によって犯罪行為があったとされた場合、それは社会的に一定の重みを持つでしょう。しかし犯罪行為をした人が出演する作品をお蔵入りしなければならないという法律はありません」
 
尾崎弁護士によると、公開中止はあくまで権利者や制作サイド、出演者による自主的な判断として行われているようだ。
 
ただし「松本氏が性加害をしたことを裁判所が認めた場合には、過去に松本氏が出演した番組のDVDや配信が終了となる可能性がある」という。

SNS上では、松本さんが活動休止直前まで出演していたテレビ番組などについては、“スポンサー離れ”が見込まれ復帰は厳しいと予想する声が多数上がっているが、ユーザーの会員費を元に運営される動画配信サービスによる制作番組などについては、活動再開後の出演を期待する声も上がっている。

過去に配信中止になったものの、再開されたケースも

今までもスキャンダル報道によって、タレントが自粛や番組降板、さらには作品自体がお蔵入りするようなケースはいくつかあった。直近の例を2つ紹介する。
 
・ピエール瀧のケース
2019年3月、電気グルーヴのメンバーとして活躍していたピエール瀧さんが麻薬取締法違反の容疑で逮捕された。この後、電気グルーヴの音源・映像の出荷や配信は終了。

・市川猿之助のケース
2023年6月、俳優や歌舞伎役者として活躍していた市川猿之助さんが自殺ほう助の容疑で逮捕された。この後、NHKオンデマンドは市川さんの出演していた大河ドラマなどの配信を終了した。
 
尾崎弁護士「これらは権利者の判断によって配信が終了したケースです。しかし、多くの人が関わった作品をお蔵入りにするのであれば、公開することで生じる問題点と、お蔵入りすることで害される人々の努力とを慎重に比較する必要があるでしょう」
 
なお、瀧さんの逮捕によって配信終了となっていた電気グルーヴの音源は、2020年6月に配信再開となっている。また市川さんの逮捕によって配信終了されていた番組についても、多くの利用者から「作品に罪はない」と批判の声が寄せられ、2023年7月にNHKオンデマンドは関連作品の配信を再開している。

「一日も早く、お笑いがしたいです」

3月25日、松本さんは約2カ月ぶりにXを更新。「人を笑わせることを志してきました。たくさんの人が自分の事で笑えなくなり、何ひとつ罪の無い後輩達が巻き込まれ、自分の主張はかき消され受け入れられない不条理に、ただただ困惑し、悔しく悲しいです。世間に真実が伝わり、一日も早く、お笑いがしたいです」と投稿している。
 
彼が再びテレビ番組に戻ってくる日はくるのだろうか。裁判の行方に注目したい。

この記事の筆者:毒島 サチコ プロフィール
ライター・インタビュアー。緻密な当事者インタビューや体験談、その背景にひそむ社会問題などを切り口に、複数のWebメディアやファッション誌でコラム、リポート、インタビュー、エッセイ記事などを担当。

取材協力:尾崎聖弥 プロフィール
第一東京弁護士会。エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワーク所属。企業に対するコンプライアンス研修などを担当している。
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